採用した韓国人材の定着と戦力化のために、「受け入れ側の会社・職場がすべきこと」として、以下の5つの要素が挙げられることを前回のコラムにてお伝えしました。
- 1. 会社として目指す姿や方針を明確にし、現場へ浸透させる
- 2. 韓国人材受け入れに必要な、しくみやツールを検討する
- 3.(受け入れ側に対し)ダイバーシティマネジメントや異文化理解に関する教育を行う
- 4.(韓国人採用者に対し)異文化理解や組織・業務の理解に繋がる教育を行う
- 5. 1on1や定期的なチームビルディング等の、日常的なフォロー施策を実行する
今回のコラムでは、3~5のポイントについて、詳しく見ていきます。
(前編はこちら▶︎https://bwell.jp/korec/magazine/archives/1793)
3.(受け入れ側に対し)ダイバーシティマネジメントや異文化理解に関する教育を行う
初めて外国籍人材を受け入れる職場では特に、日本人と異なる文化や商習慣を持った人々と働くという点で、不安が大きいことが想定されます。まずはそのような現場の不安を軽減することが重要ですが、その際ポイントとなるのがリーダー層へのマネジメント教育です。リーダー層に対し、そもそも韓国人材と日本人とではどのような文化や価値観の違いがあるのかを理解してもらい、それらに配慮したダイバーシティマネジメント手法をトレーニングすることが肝要です。
その前提として、まずは個々の意識の部分に目を向ける必要があるしょう。スキルの習得も大切ですが、多くの場合、外国籍人材の受け入れにあたって障壁となるのが、個々人が持つ「アンコンシャス・バイアス」です。アンコンシャス・バイアスとは“無意識の偏見”のことであり、本人が気付いていない偏ったものの見方が判断や行動に影響を与えることを指す概念です。リーダー自身がこのアンコンシャス・バイアスを取り除き、同時にメンバーが持つアンコンシャス・バイアスを取り除く働きかけができるよう、促していくことが望ましいでしょう。
尚、昨今はリモートコミュニケーション環境の浸透により、異文化理解に対するコミットが一層重視されています。対面でのコミュニケーションが不足する分、互いに相手を理解しようとする姿勢がより求められるためです。そのためにリーダーが行うべきことは、「承認」をベースに社員同士が互いを認め合えるような、尊重できるチームづくりであると言えます。
4.(韓国人採用者に対し)異文化理解や組織・業務の理解に繋がる教育を行う
受け入れ側に対する意識付けが進んだら、今度は韓国人材採用者に対する教育方針・内容を検討します。具体的には、異なる文化や商習慣に対する理解を深めてもらうと同時に、仕事の全体像やステークホルダーとの関係性、行う業務の意義・意味と詳細な進め方などをレクチャーします。
この段階では、明文化されたテキストやマニュアルなどがあると良いでしょう。例えば、会社や業界固有の言葉に早く慣れるために、用語集や難しい会話へのアプローチ方法に関する手引きを一度作ってしまえば、(韓国人・日本人を問わず)新規採用社員を受け入れるシーンで毎回活用することができます。
また職場に存在する“暗黙知”や“何となく理解が共有されている事項”については、ぜひ言語化していただくことをお勧めします。例えば、「印刷機が故障してしまったとき、誰にどのように報告するのか」「全員不在の隣の部署の電話が鳴ったとき、どのように対応するか」など、一見些細な事柄だと思われるようなことも、新規で採用される韓国人材にとっては不安や戸惑いの種になりかねません。韓国人材の受け入れにあたって常に意識しておくべきことは、いかにスムーズに職場になじんでもらうかということです。ぜひ自分たちが新入社員の頃、どのようなことが知りたかったのか、どのようなサポートを受けたかったのかという視点をもちながら、支援すべき内容をご検討ください。
さらに、入社後のオンボーディングにおいては、育成計画を共有しながら、今後身に付けてもらいたい知識やスキルに対してコミットさせていく必要があります。そのためには、目標設定のスパンとして有効とされる“最初の3か月間”において、具体的な目標および、達成するために必要なプランを韓国人材採用者とともに設定することが有効です。早い段階で自信を得ることができるように、まずは小さなプロジェクトの作業など、新入社員でも貢献できる業務を与えたり、目標が形骸化しないよう、上司やトレーナー・メンターと新入社員とが内容や進捗を共有できるシートを作成したりすると効果的でしょう。
5. 1on1や定期的なチームビルディング等の、日常的なフォロー施策を実行する
さて、上記の準備が整ったら、いざ韓国人材採用者の受け入れです。職場受け入れ後のポイントは、「意図を持った」「多くのメンバーを巻き込んだ」「継続的な」フォローです。よくありがちな事例として、配属後は直属の上司やトレーナーがすべてのサポートを行うといったケースが挙げられますが、これでは新規採用者が孤立してしまったり、悩みを抱えても誰にも相談できなかったりといった問題が生まれかねません。そこでオススメしたいのが「定期的なチームビルディング」です。チームビルディングと一口に言っても、その手法は多岐にわたります。日本人と韓国人とが、共通のお題や課題に取り組むワークショップを実施するといったことでも一体感が強くなりますし、親睦を深めるためのランチや懇親会を定期的に開催するということでも良いしょう。
また、4でお伝えした目標設定に関しても、日常的な1on1のなかで、その進捗を共有していくことが大切です。その際、課題やうまくいっていない事柄に対し、どのようなサポートが必要かを互いに話し合える機会が持てるようにしてください。
まとめ
本コラムでは2回にわたり、「韓国人材の定着と戦力化を促す5つのポイント」についてお伝えしました。ビジネスの長期的な成功・発展のためには、背景の異なるメンバー同士が互いの違いを受け入れ、尊重し合う体制をつくることが必要不可欠と言えます。「採用の成功=その人材がどれだけの活躍・利益貢献をしてくれるか」という観点から、ぜひ受け入れ側のしくみづくりにも注力していただければ幸いです。