韓国人材の定着と戦力化を促す5つのポイント(前編)

「採用活動の成功とは何ですか?」と問われたとき、人事担当の皆様はどうお答えになるでしょうか?

日本人採用・韓国人採用いずれのケースにおいても、採用活動を行う上では、“今年度は●月までに▲人採用する”といった数値目標が初期段階で設定されているはずです。

ただしそれはあくまでも定量的な目標であって、採用活動の本質とは“入社した人材がどのくらい定着するか”“入社した人材がどのくらい活躍し、自社の利益創出に貢献してくれるか”であると私たちは考えています。せっかく苦労して採用した韓国人材が早期離職してしまっては、コスト面での損失も大きな痛手となるでしょう。

本コラムでは、採用した韓国人材にその能力を如何なく発揮してもらうために、受け入れ側の会社・職場がすべきことを、前・後編に分けてお伝えしていきます。

求められるダイバーシティ&インクルージョンの考え方

昨今、企業経営においてもダイバーシティ&インクルージョンの重要性が叫ばれる中で、外国籍人材を採用し、受け入れるという活動は、組織の生産性向上に大きく寄与していると言っても過言ではありません。ダイバーシティとは「多様性」を意味し、国籍、性別、年齢などにこだわらず、さまざまな人材を登用していく動きのことを指しています。また、「インクルージョン」とは「受容」することであり、多様な人材の多様な価値観を融合させながらそのメリットを活かしていく組織のあり方を示す言葉です。

先の読めないVUCAの時代である現代において、企業が競争力を得て持続的に成長していくためには、創造的なソリューションや革新的なサービスを開発し、新しい市場を獲得していく必要があります。そしてその実現のためには、同質性の高いチームではなく、多様性を活かしたチームのほうが優れていると言われています。

韓国人材の採用においても、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方は非常に重要です。異なる文化や慣習を持った人材に対して、どのように日本企業の価値観に馴染んでもらうのか。また、どのように成長意欲を持って高い成果を挙げてもらうのかを、「受け入れ前に」考えておく必要があります。そして入社後のオンボーディング(仕事をする上で必要となる知識や技術、企業理念や仕事の進め方、人間関係等を含む情報や価値観を伝えながら、組織の一員として定着させることを目的とした教育)の段階で、いかに相互のギャップをなくしていくかが鍵となります。

韓国人材の定着と戦力化を促すためのポイントとは

それでは、実際に韓国人材の定着と戦力化を促すためには、どのような取り組みが必要になるのでしょうか。ここでは、以下の5つのステップに沿ってご説明します。

  1. 会社として目指す姿や方針を明確にし、現場へ浸透させる

  2. 韓国人材受け入れに必要な、しくみやツールを検討する

  3.(受け入れ側に対し)ダイバーシティマネジメントや異文化理解に関する教育を行う

  4.(韓国人採用者に対し)異文化理解や組織・業務の理解に繋がる教育を行う

  5. 1on1や定期的なチームビルディング等の、日常的なフォロー施策を実行する

それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

1. 会社として目指す姿や方針を明確にし、現場へ浸透させる

まずは前提として、外国籍人材を受け入れることの意義や意味を現場が理解していないと、真のダイバーシティ&インクルージョンの実現は難しいと言えるでしょう。企業の採用や教育支援を行っている株式会社エイムソウルが実施した『日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査(2021年8月)』によると、入社後にモチベーションダウンをした経験があると回答した外国籍人材のうち、約4割がその原因として「外国人に対しての差別・偏見があった」ことを挙げています。

韓国人材の受け入れにおいても、経営層や人事部門のみの理解ではなく、現場レベルにまで会社の方針やどのような組織を目指しているのか、ということを浸透させる必要があると言えます。

2. 韓国人材受け入れに必要な、しくみやツールを検討する

しっかりと現場にまで会社の方針を落とし込むことができたら、今度は受け入れ体制の検討に入ります。このフェーズについては、経営層・人事部門と現場とが一体となって進めていくことがベストです。日本人を新規採用する際に用いているしくみやツールがあれば、そちらを活用いただいても構いません。但し、韓国人材にとって、日本の商習慣や文化は自国のそれらとは異なるものであり、その点についてはきちんと配慮をしておく必要があります。

例えば、組織の構成はどうなっていて、どのようなステークホルダーが存在しているのか。また、休暇の取り方や残業に対する認識等も、後々のトラブルを生まないために、すり合わせておくことが重要です。

はじめて韓国人材を受け入れするケースでは、簡単なマニュアルを用意し、受け入れに関する全メンバーに共有しておくことをお勧めします。

次回のコラムでは、残りの3~5のステップについて、事例を含めながら解説していきますのでお楽しみに!