科学技術特性化大学まとめ

皆さんは、韓国の名門大学と言うとどこの大学をまず思い浮かべるでしょうか?ソウル大学や高麗大学、延世大学であるSKYや、その他 ’’インソウル’’の大学を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

一方で、ソウルに位置する大学以外にも、理工系のトップ大学として一目置かれている大学が存在することをご存じですか?理工系分野に特性を持つ韓国の大学は、日本においては未だ認知度が低いものの、韓国国内、そして世界的にもすでに高い認知度や評価を得ているのです。今回は、韓国の理工系大学として注目されている、科学技術特性化大学について紹介していきたいと思います。

科学技術特性化大学とは?

韓国では、理工系に特化した大学として、「科学技術院」を全国各地に開設しています。科学技術院とは、科学技術の発展および理工系人材育成のための特別法によって設立された4つの研究中心大学(科学技術院)のことであり、韓国科学技術院KAIST)、蔚山科学技術院UNIST)、光州科学技術院GIST)、大邱慶北科學技術院DGISTを指します。

最近では、科学技術院には含まれませんが理系特化大学として力を伸ばしている、私立大学のPOSTECH(浦項工科大学)を含めた5つの大学を「科学技術特性化大学」(理工系特性化大学)と指定しています。これらの大学は科学技術特性化大学総長協議会を構成しており、発展方向を日々議論しています。ナノテクノロジーやバイオテクノロジー、ロボット工学や人工知能など、各大学により得意分野は異なりますが、科学技術特性化大学では共通して科学技術研究を中心とした理工系教育と研究を重点的に行っています。また、科学技術特性化大学では、グローバル化を進めるために、共通言語は英語で統一されているため、大部分の授業が英語で行われます

KAIST、GIST、DGIST、UNISTは科学技術院として科学技術情報通信部の管理監督を受けています。また、POSTECHも韓国最大の鉄鋼メーカーであるPOSCOの支援を受けて設立された研究中心私立大学であるため、5つの大学ともに財政が丈夫で、国家の支援が豊富であるとされています。そのため、総合4年制大学に比べて入学定員が少ない方ではありますが、奨学金が非常に豊富で、学生一人当たりの支援も多いです。

ランキングから見る理系大学の実力

韓国国内で代表的な大学ランキングである「中央日報大学評価」の2022年度版を紹介します。

※向かって右側が日本語訳/通称です。

※ 点数は260点満点。便宜上、15位までを表示しています。

中央日報は総合4年制大学対象の調査結果とは別に、科学技術特性化大学に対しての評価として「自然科学」「工学系列」という2つの指標を発表しています。上記の評価結果によると、「自然科学」「工学系列」両方のランキングで科学技術大学院を含む理工系大学が上位を占めていることがわかります。

科学技術特性化大学の紹介

5つの大学の特徴をまとめてご紹介します。各校のさらに詳しい情報は、 KORECの韓国大学名鑑をご確認ください。

■韓国大学名鑑はこちらから

韓国科学技術院 KAIST

韓国科学技術院(KAIST, カイスト)は1981年に設立された公立大学です。科学技術の発展および理工系人材育成のための特別法によって設立された科学技術院の1つです。また、韓国で一番最初に設立された科学技術院大学でもあります。

KAISTはSKYと並ぶ、韓国トップの大学の一つであり、韓国国内ではソウル大学とほぼ同等扱いされる理系トップ大学です。工学と科学技術の専門家を養成するために作られた研究大学として位置づけられています。

大学の歴史は他の大学と比較して浅いものの、国内だけでなく、今やアジアを越え、世界で権威のある大学として考えられています。合格率は2割以下と、理工系界の最難関大学としても名高いです。学生数は10000人弱であり、そのうちの6割は大学院生や研究生であることが特徴的です。

KAISTのメインキャンパスは、韓国の大田に位置しています。大田は韓国の中心部に位置する都市で、科学技術の研究開発拠点として知られています。

浦項工科大学 POSTECH

浦項工科大学(POSTECH,ポステク)は、韓国初の研究指向の大学として1986年慶尚北道浦項市に設立された比較的新しい大学です。KAISTと並ぶ理工系最難関大学の一つです。

POSTECHは上記で記載した科学技術院大学ではなく、理工界に特性化されている一般私立大学に分類されています。ただし、科学技術院と共に科学技術特性化大学を構成し、英才学校と科学高等学校のAP教育課程も一緒に開発するなど、歩みを共にすることもあります。

建国理念にあるように少数精鋭の優秀な学生が通う大学であり、学生数は学部生と大学院生を合わせても約3500名です。合格率も16%であるため難関大学に位置づけられます。他の技術科学院大学と比べると歴史は浅いものの、世界ランキングでも上位を保つなど実力を伸ばしており、年々人気が高まっている大学です。

蔚山科学技術院 UNIST

蔚山科学技術院(UNIST)は韓国の産業首都である蔚山に位置する研究中心の国立大学で、科学技術院の1つです。また、大学の略称としてNUIST(ユニスト)と呼ばれています。先端科学技術の革新と地域科学技術人材の養成、産学協力を目的としています。2007年に設立され、2009年に開校したUNISTは短期間で高いレベルの教育および研究施設を備え、産学協力にも力を入れています。

また、UNISTに関しては、専門科目だけでなく、教養科目まで全てが英語で授業が行われており、他の技術科学院との差別ポイントとなっています。

光州科学技術院 GIST

光州科学技術院(GIST)は韓国の光州に位置する科学技術院の1つです。また、大学の略称としてGIST(ジスト)と呼ばれています。韓国の科学技術情通信部の傘下でその他公共機関として1993年に設立されました。1995年には修士課程である大学院ができ、2010年から大学の学士過程も始まりました。

大学の特徴としては、奨学金が豊富で、学生寮を提供するなど最高基準の学生福祉を誇っています。また、少数精鋭教育を基盤とし、教授対学生間の密着メンターシステムもGISTのみの特徴としてあげられます。

大邱慶北科學技術院 DGIST

大邱慶北科學技術院(DGIST)は韓国の大邱にある公立の理工系大学です。大学の略称としてDGIST(ディジスト)と呼ばれ、科学技術院の1つです。科学技術通信部所属であり、韓国科学技術院、光州科学技術院に続き3番目に設立された科学技術院です。

KAIST、GIST、UNISTなどと違う点は研究部、学士過程、大学院過程それぞれ運営される3体制であることです。DGISTは研究所から始まった機関として現在の研究部が存在し、博士課程の教授と、学部過程の教授がそれぞれ専攻別に所属しています。大学院の教授には授業の負担を減らし、大学院生の指導および研究をより深めるために学士過程の教授には学部性教育により充実できるシステムが行われています。

科学技術特性化大学の主な就職先

KAISTやPOSTECHは、韓国を誇るSAMSUNG、SK Hynix、SK C&C(IT system開発)、 NEVER(SW産業部)、 HYUNDAI oil bankなど、半導体関連企業等への就職が多いです。

UNIST、GIST、DGISTは、現代自動車、現代重工業、SAMSUNG、LG、科学技術院研究所、国防科学研究所、大学教授などが主な就職先として挙げられます。

まとめ

いかがでしたか?今回は、韓国の理工系難関大学である「科学技術特性化大学」について詳しく紹介しました。インソウルの大学だけではなく、理工系に特化した大学があることも知っていただけたのではないでしょうか。

技術が日々進化を遂げる一方で、日本ではIT業界を始めとする様々な業界において、エンジニア不足が問題となっています。科学技術特性化大学の学生は、技術力と専門性は勿論のこと、英語力も高いためグローバルなエンジニア人材の宝庫だと言えます。

今後、理工系人材として、科学技術特性化大学出身の韓国人材を採用するという選択が更に注目されていくことは間違いないでしょう!

<参考文献>

ビーウェル:韓国人就職ナビの韓国大学名鑑より