コロナ以降、韓国での在留邦人数は徐々に増え、2023年度は4万2000人を突破しました。筆者自身も日本企業で2年間会社員を経験した後、この4月に退職、現在は韓国にワーキングホリデーで来ています。これまでにも、韓国企業の特徴や韓国人大学生の就活情報をお伝えしてきましたが、筆者が感じた日本と韓国の就活・就業のさまざまな違い、最新版のリアルな情報をお伝えします。
韓国の就職活動
時期
韓国では日本の新卒一括採用のような制度をしている企業はあまりなく、ポストに空きが出次第、採用を行うことが多いため、就職率は60%台と非常に低いです。そのため、大学で講義の単位を取り終え、卒業が確定した段階の4年次後半から就活を開始する学生が多いようです。学生たちは、就職時期までに資格取得・海外留学・長期インターン・ボランティアなどを経験し、即戦力採用に適応できるよう、入学した時から準備を開始しています。
応募方法
履歴書の他に自己紹介書やポートフォリオを提出し、エントリーします。
:自己紹介書
志望動機、入社後の抱負、経歴、成長過程、自身の性格などを記載する日本でいうエントリーシートのようなものです。
:ポートフォリオ
これまでの経歴や作品などをまとめ、単なる書類ではなく履歴書・経歴書の内容をより詳しく説明するものです。企業側は、内容だけでなくデザインや配色なども採用判断にしているようです。
面接
応募から入社まで数週間程度と短いことが多いようです。欠員補充のためであったり、性急な性格の人が多い点が影響していると考えられます。また面接まで進んでも、入社希望のタイミングが企業の理想のタイミングとマッチしなければ落とされることもあるそうです。企業によって決まりは異なるものの、スーツではなくオフィスカジュアルのような少々ラフな格好で面接を受ける就活生が多いそうです。
韓国での働き方
チャット・電話を活用
性急な国民性からスピード感を重視するため、基本のやり取りはチャットと電話で簡単・迅速に行うことが多いようです。メールはファイルや重要な資料を送る場面に使われるものの、利用頻度は低く、日本以上にレスポンスの速さが求められる印象です。またプライベートも同様で、受信に気づいたらすぐ既読・返信をする人が多いようです。一方で、面接や営業をした際にすぐに反応がなければ興味がないと判断することもできます。
まずはやってみる精神
韓国の文化として、とりあえずアイデアが浮かんだことをやってみて、修正や改善が必要であればその都度考えるという傾向があります。後から修正に時間がかかったり、プロジェクトが中止となるリスクもありますが、動かないよりもまずは何か試してみるという考えの人が多いようです。また、このような精神からか、企業で働いたのち、独立して個人で事業を始める人も多く、世界の先進国の中でも個人自営業の比率が高いです。
リモートワーク普及率先進国最下位
2023年9月4日(現地時間)付のニューヨーク・タイムズ紙によれば2023年4~5月で34カ国の正社員4万2千人余りを対象にリモートワーク日数を調査した結果、韓国は1.6日で最も短かったと報じたそうです。(最多日数はカナダの6.8日)。韓国はIT先進国でありながら月平均リモートワーク日数が短い理由として上下関係や対面コミュニケーションを重んじる文化が根強く、リモートワークに対して懐疑的と捉える人が多いようです。また複数世帯での同居や家の狭さ、法整備や中小企業のインフラ整備が間に合っていない点もリモートワークへの取り組みを妨げる要因として挙げられているようです。
昼食代が支給、交通費は自己負担
企業により福利厚生は異なりますが、一般的にほとんどの企業でお弁当・社食が提供、または昼食代が支払われるようです。支払われる昼食代は10,000ウォン(約1,080円)程度としている会社が多いようです。一方で、家からの交通費は自己負担となる場合が多いです。就職の際には、家からの距離と合わせて交通費についても、予め確認しておくのが最善のようです。
時間にルーズ(コリアンタイム)
せっかちな文化であるものの、アポイントや会議の開始時間には少々ルーズであり、コリアンタイムとも呼ばれていたりもします。開始5分前に待機していると、「早く来られましたね〜」と言われることもしばしばあるようです。逆に、数分の遅刻であれば特段連絡がないことも多いようです。納期や提出にはスピードが重視されていますが、人との交流の場では性急さよりも対面コミュニケーションで温厚な付き合いを重視している方が多いようです。
トイレットペーパーが流せない
水洗トイレは一般化やトイレットペーパーの飛躍的な品質向上はしたものの、トイレの水圧や構造に関する問題や、ゴミ箱に捨てる習慣が残ってしまっていることから、トイレにはゴミ箱が設置され、水に流さない(流せない)ところがまだ多く残っているようです。2018年の平昌オリンピック開催に合わせて、行政案全部は2017年5月に「公衆トイレ等に関する法律」施行令を改定し、2018年1月1日より公衆トイレのトイレットペーパー用のゴミ箱を撤廃する法律を制定しました。政府も取り組んでいる課題であり、徐々に改善されている見通しのようです。
まとめ
これまでにもKORECでは韓国の就活や就業を取り巻く環境についての記事はありましたが、今回は韓国のリアルな働く現場の最新版情報を紹介させていただきました。隣国であるため、日本と似た文化がありますが、就業事情については異なる点も数多くあります。企業の皆様には、こちらの記事で韓国の就業事情の理解を深め、韓国人採用にお役立てください。
参考文献
ヨナプニュース 昨年度の卒業生就職率69.6…過去5年で最高水準(연합뉴스 지난해 대학 졸업생 취업률 69.6%…최근 5년내 최고 수준)
コリアンアンテナmedia【韓国の就活はどう違う?】韓国と日本の就職活動の違い!
アジア経済研究所 IDE-JETRO 新興国・途上国の今を知る
韓国の仕事文化・習慣は?一緒に働く前に理解しよう | シロフネ
HANKYOREH ハンギョレ新聞 韓国のリモートワーク、月平均1.6日で「世界最下位」…1位は?
韓国人と仕事をしてわかった10のこと&韓国人と仕事をする上での心構え
過去記事