採用活動からインターンシップなど 世界の就活事情

日本の就活市場において、新卒者を優遇し行われる「新卒一括採用」。日本ではこの採用方法が一般的となっていますが、韓国を含む海外では、実力主義で通年採用を行うなど、日本の採用と様々な違いがあります。今回は、アジアの中でも主要国である韓国と中国、独自の採用システムを持つドイツ、女性の社会進出が進むベトナムの4つの国を取りあげていこうと思います。①採用活動の特徴、②インターン制度、③その他の特徴 という3つの項目に分けて、海外と日本の採用の違いや国別の具体的な採用方法などを紹介します。

中国ー転職が盛ん、契約更新制の企業も多い

①採用活動の特徴

  • ー戦力/学歴/スキルを重視

中国では、即戦力を重視して採用活動を行っている為、その企業での仕事に関する実務経験の有無が評価の対象になります。どこの大学か、仕事に関連する学部学科か、英語が話せるか、などの面が重視されます。仕事に関わる学部学科で学び、レベルの高い上位大学出身者であればあるほど、即戦力の面で優位とされており、中国では大学選び、学部学科選びが大切とのこと。

  • ー転職が盛ん

スキルアップや待遇アップのための転職は当たり前に行われています。企業としては、せっかく採用しても短期間で辞めてしまうこともあるため、大抵は短期~数年の契約で更新制としている企業が一般的だそうです。

②インターン制度

中国では最低1か月を要することがインターンシップ制度の特徴です。例えば、ある大手企業のインターンは1年契約となっています。他の企業を見てみても、短期で1か月、中期で3〜6カ月、長期で6カ月となっていることが多いようです。上記で述べたように、中国では即戦力が重視されている為、大学1・2年生の頃からインターンシップを通して実務経験を得ることが多いようです。実際、中国のインターンシップの主流は、インターンであったとしても社員とおなじようにプロジェクトの一員として、責任のある仕事を任されたり、売上に直結するような成果を求められたりするようです。

③その他特徴

日本のポテンシャル採用と同じように、最近は人柄に近い面を見られるようになってきています。それが「芝麻信用(セサミクレジット)」です。芝麻信用(セサミクレジット)とは、アリババグループのサービス使用履歴から、個人や法人の信用度を評価し数値化するサービスです。芝麻信用(セサミクレジット)では、返済履歴や支払い能力、素行などの項目に対してAIが自動で点数をつけて定量化します。最近ではこの芝麻信用(セサミクレジット)のスコアが、就活・転職の際に企業から求められることが増えているそうです。

ドイツー大学から企業まで一貫したスペシャリスト育成体制

①採用活動の特徴

  • ー大学の成績重視

ドイツの企業は、一般的にインターンの成果(後述)と並び、専攻の成績を大きく評価基準として考慮します。大学から企業まで一貫してスペシャリストの育成を軸とした人材開発プロセスを行うドイツでは、その専門分野の知識をどの程度大学時代に身に着けたかという点は、特にシビアに評価されるそうです。

  • ー通年採用

ドイツでは、日本のように定まった新卒採用スケジュールがあるわけではなく、個人ベースで就活スケジュールが決まります。インターン経験や卒論、ライフプランによって内定や仕事の開始時期は大きく異なり、入社時期はある程度融通がきくのがドイツの採用の特徴です。

②インターンシップ

実力主義のドイツでは、仕事経験がない学生はまず仕事の実績を作るところからキャリアパスが始まります。キャリアの第一歩はPraktikumと呼ばれ、これは日本でいうインターンシップのことです。ドイツのインターンシップは本格的な「職業訓練」のニュアンスを色濃く持ちます。ドイツの学生の9割近くが新卒採用前にインターンを経験していると言われており、インターン経験後そのまま企業から採用されるケースも多いようです。基本的に企業側は、インターン生は安価な労働力として活用し、主に市場調査や新規開拓など失敗してもあまり問題がない業務に割り切る傾向にあります。

③その他特徴

・スペシャリストを育成するデュアルシステム

ドイツでは高等教育進学か就職かの進路分岐が早く、教育と就業を両立させる「デュアルシステム」があります。義務教育後、全日制学校に通学しない場合は、18歳まで週1〜2日就業学校で学びながら、企業で職業訓練を積むことになっています。

ベトナムー通年採用制、転職理由「通勤時間」が上位⁉️

①採用活動の特徴

  • ー通年採用

ベトナムの企業は、学生が卒業するタイミングに関わらず、随時採用活動を行っています。これは、ベトナムは大学によって卒業の時期が異なり、特定の時期に大量の学生が卒業するといった集中的なタイミングがないためだと言われています。ベトナムで就職活動をする際、企業に申し込みをするために主にとられている手段は下記のように3つあります。

▽企業への申し込み方

1.採用会社のサイトで申し込み、人材紹介会社からの採用情報をもらって申し込む

2.Facebook等のSNSで採用情報を見てメッセージで申し込む

3.知り合いからの紹介で申し込む

  • ー転職事情

ベトナムでは、他にいい仕事があれば転職をするというのはあたり前であり、3年ごとに転職をするという人は、とくに若者の間では珍しくないといいます。転職理由としては「キャリアアップができない」「給与に不満」などの声があげられており、この点では日本の転職理由と変わりがないように思われます。ただ「通勤時間」に起因する転職も多いのは、ベトナムを含む東南アジアの特徴と言えるようです。

②インターンシップ

ベトナムの学生はインターンシップを重視する傾向があります。これは卒業前にインターンシップを通じて積み重ねた優れたスキルや経験を持つことで差別化しようとする為です。

③その他の特徴

ベトナムは女性の社会進出が顕著な国として知られています。女性の管理職の割合は39%と高く、フィリピン、ブラジルに次ぐ3番目だそうです。(2020年時点)これは、1975年まで続いた戦争により男性の数が圧倒的に減少した中でドイモイ政策(1986年から実施された計画経済から市場経済への転換政策)により女性の社会進出が自然に後押しされたためといわれています。

韓国ー年2回定期採用から通年採用へ移行中

①採用活動の特徴

  • ー就職活動時期

韓国ではこれまで、年2回採用時期を設ける定期採用が導入されていました。しかし近年、大企業や中堅企業を中心に、定期採用から通年採用の動きが進んでおり、世界企業との激しい競争の中で活躍できる、即戦力人材の獲得に注力していく風潮があるようです。

  • ースペック採用

韓国では、学生の持っているスキルや資格・試験などを重視して採用活動を行います。これにより、学生側は求められるスキルや待遇から企業選びをすることが一般的となってます。企業側は職務能力(プロジェクトの実行経験、職務に関連するインターン経験、大学での選考、職務に関連する資格など)を重視して採用するため、日本と比べスペックの高い人材が求められていることが分かります。

②インターンシップ

上記で見たように、韓国の企業がスペックのある即戦力を重視している為、大企業を中心にインターンシップが注目されているといいます。インターンシップの内容は就職を前提とした実務を行うことが多く、期間も1か月以上の長期間が一般的です。

③その他の特徴

日本であれば就職先の選択肢として大企業だけでなく中小企業もありますが、韓国では中小企業への就職は人気がありません。というのも、財閥企業を始めとした大企業と中小企業との間に圧倒的な差があることから、大企業への一極集中を引き起こしてしまっているのです。このような面からも、狭き門をくぐる判断材料としてスペックが活用されるようになるのは、ある意味必然と言えるかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。同じ東アジアの国でも採用の際に重視していることが違ったり、ドイツのように進路選択の時期がかなり早かったり、国によって採用の仕方に違いがあることが見えてきたと思います。外国人を採用する際、このような違いも考慮して採用活動を行うと、スムーズに行くことがあるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。

参考文献

https://iroots.jp/plus/archives/1154