現金はもういらない!? 韓国のキャッシュレス文化と投資熱

隣国韓国では日本よりもキャッシュレス決済が社会に深く浸透していることをご存知ですか?本記事では、キャッシュレス先進国の韓国における決済方法の変遷や国民の生活スタイル、投資動向に着目し、韓国のキャッシュレス文化について探っていきます。

韓国はキャッシュレス率が世界トップ!?

引用元:キャッシュレス・ロードマップ2023

⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会から発表された世界主要国のキャッシュレス決済状況をまとめた「キャッシュレス・ロードマップ2023」(上図参照)によると、日本は32.5%という結果に対して韓国にキャッシュレス決済状況はなんと95.3%を記録しています。中国やアメリカ、イギリスといった先進国と比較しても、韓国のキャッシュレス決済の普及率が際立っていることがわかります。

韓国におけるキャッシュレスの普及が進んだ背景には、1990年代のアジア通貨危機をきっかけとする政府のキャッシュレス推進策と、2000年代以降のスマートフォン等の技術革新があります。

1990年代後半のアジア通貨危機で韓国ウォンが大幅に下落したことを受け、個人の消費支出を刺激するために政府がクレジットカードの利用を推奨したことがキャッシュレス社会の端緒となりました。その後、クレジットカードの所得控除制度や、2枚以上のクレジットカード保有者に対する宝くじの特典付与など、政府によるキャッシュレス奨励策が実施されました。これらの政策により、1999年から2002年の間にクレジットカードの発行枚数は2.7倍、利用額は6.9倍に増加しました。

また2000年代に入り、韓国ではスマートフォンの保有率が飛躍的に伸びました。韓国のスマートフォン普及率は2023年時点で97%を超えており、その高いインフラ環境がFintechをはじめとするデジタルサービスの急速な発展を後押ししています。

生活の中のキャッシュレス

韓国の生活の中で浸透している主なキャッシュレス決済手段は、クレジットカード/デビットカード、携帯決済(Kakao Pay、Samsung Pay等)、P2P送金アプリ(Toss等)など多岐にわたります

クレジットカードは依然重要な決済手段ですが、スマホを使ったQRコード決済サービスも店頭で多く利用されています。Kakao PayやNaver Payといったスマホ決済アプリの普及がその背景にあります。

また、生活スタイルもキャッシュレス化に適応している部分が大きいです。セルフレジや無人決済端末(キオスク)を導入する店舗が増え、「カード Only」を掲げる飲食店も珍しくありません。キャッシュレスが当たり前の環境となっているため、現金を使わずに不便なく生活を送ることが可能となっているのです。

Fintechで進む韓国の投資熱


IT×金融分野であるFintechが発達している韓国では、前途したシステムの下、投資も盛んに行われています。2020年のコロナ禍を機に「재테크(財テク)」という言葉が韓国で流行し、個人投資熱が一段と高まりました。コロナによる外出制限から、自宅でスマートフォンを使って株取引や仮想通貨投資を行う韓国人が増加したのです。韓国証券取引所の統計によると、2020年には韓国人の個人株式保有比率は55.2%と半数以上までのぼるなど、株式投資への関心の高さが伺えます。

さらに韓国では、FX取引や仮想通貨への投資も活発化しています。スマホアプリの普及が、手軽に取引を開始できる環境を作り出し、投資熱を加速させています。筆者も韓国の大学で学びながら、韓国人学生の高い投資への関心を実感しました。専攻分野に関係なく、個人で株取引を行う学生が多数おり、キャッシュレス社会の恩恵をフルに享受し、自らも金融ITに関心を寄せる韓国の学生たちの姿が印象的でした。
特に筆者が所属している経営学部では、ブロックチェーンやAIを用いたFintech関連の授業が豊富に提供されています。教育機関側も社会のトレンドを敏感に捉え、最新の金融テクノロジーを学べるカリキュラムを整備しているように見受けられました。金融とITが融合した韓国の学術環境は、キャッシュレス先進国ならではの特徴だなと感じました。

まとめ

いかがでしたか。今回は、韓国のキャッシュレス文化とFintech先進国としての側面について触れてみました。韓国ではキャッシュレス社会の到来により、国民の生活スタイルだけでなく、ITを活用した投資意識も変化していることが伺えました。

特に、Fintech関連授業の充実など、教育機関での金融IT分野の扱い方は、キャッシュレス先進国ならではの特徴といえますね。Fintech(IT×金融)人材獲得競争が激化する中、韓国人の持つデジタルへの適応力とITリテラシーの高さは今後更に注目されていくのではないでしょうか。本記事が、韓国人採用に関する一助となれば幸いです。

参考文献

キャッシュレス・ロードマップ2023

2023年 韓国成人スマートフォン使用率97%…60代98%、70代以上85% (policetv.co.kr)

韓国のキャッシュレス導入率はなぜ高い?理由や5つの政策を紹介|DXマガジン|オフィスペイ (officepay.jp)

なぜ韓国はキャッシュレス化が浸透しているのか?その理由を徹底解説! – PayPay

Creatrip: キャッシュレス社会の韓国(韓国はカードが主流!)

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