韓国MZ世代が望む働き方

韓国のMZ世代の会社員のうち、49.3%の会社員が「現在の職務に満足できない」と回答したとの記事がありました。日本でもしばしば取り上げられている若手層の働き方についてですが、韓国のMZ世代はどのような点に不満があり、望む会社とは何か、を今回の記事では探っていきます。

※韓国ではMZ世代(M世代+Z世代)という表現が多用され、引用記事内ではMZ世代という言葉が使われていますが、本記事では若者(青年層)を表す言葉として「Z世代」を用い統一しています。

不満の内訳と理由

韓国の就職情報サイトによると、MZ世代の会社員209人を対象に現在の「職務満足度」に対するアンケートを実施したところ、49.3%の会社員が「現在の職務に満足できない」と回答したとのことです。

:職務満足度が低い職種と高い職種

約半数のMZ世代の会社員が職に対して満足できていませんが、その中でも満足度の低い職種・高い職種に特徴があるようです。

・満足度が低い職種 *カッコ内は職務に満足していないMZ世代会社員の割合

顧客相談・サービスと営業・営業管理職(66.7%)

財務・会計職(62.5%)

デザイン職(62.4%)

生産・現場職(56.5%)

・満足度が高い職種 *カッコ内は職務に満足しているMZ世代会社員の割合

企画・戦略職(72.7%)

マーケティング・広報(66.7%)

IT・開発職(58.1%)

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MZ世代の望む働き方

約半数のMZ世代の会社員が現在の職務に不満を感じているとのことでしたが、彼らはどのような働き方を望むのでしょうか。

給料よりもワークライフバランス

2024年に韓国経済人協会が発表した調査によると、就職したい企業として1番多かったのは、36.6%のMZ世代の人が選択した「仕事と生活のバランスが保障される企業」でした。先に述べた職務満足度の不満要素の2位にも「頻繁な夜勤など仕事量の多さ」が上がるように、MZ世代には高い月給や定年保障などよりも、個人の生活を保障される労働環境を重視しているということがわかります。

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副業を検討している

三星電子が2024年8月に発表した報告書によると、MZ世代の会社員うち約73%が副業を考慮中であるとのことでした。しかしながら、副業を今はしていないが検討はしているMZ世代会社員の58%と、実際に副業をしているMZ世代会社員の55%が時間が足りないと回答したそうです。副業を検討する(開始した)理由として、年俸の低さや適性や夢と異なる業務に携わっていることなどが挙げられ、MZ世代会社員のビジョンと現実がミスマッチしているのではないかと考えられます。

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コミュニケーションを重視する会社を好む

韓国の経済団体である全国経済人連合会が2023年に発表した調査によると、MZ世代が好む経営陣のタイプを①コミュニケーション型②カリスマ型リーダー③委任型リーダーの3タイプから選択させたところ、①のコミュニケーション型リーダーを選んだ割合が77.9%と最も多かったとのことでした。また、企業イメージの向上に必要な要素は何かという質問に対する回答では、コミュニケーションの強化が37.2%で1位であったとのことです。韓国のMZ世代は、チームを引っ張る上司と働いたり、若手のうちから裁量権のある働き方をするよりも、上司との調和の取れた働き方を望んでいるようです。

韓国企業の取り組み

福利厚生の充実

韓国最大のモバイル決済事業者であるtossは、社員の10人中9人がMZ世代の会社です。「仕事だけに集中しても私生活に戻れるようにする」をモットーに、充実したサポートを提供しています。仕事と生活のバランスを望む多くのMZ世代にとって、魅力的な福利厚生と考えられるでしょう。

ー 1人1枚法人カードを支給し、昼食、夕食、間食が無料

ー 4箇所のカフェで100種類以上のドリンクメニューとデザート、サンドイッチを用意

ー 住宅資金ローン1億ウォン(日本円約1,000万円)の無利子サポート

ー 無料の社内ヘアサロン

「MZを狙撃したフィンテック異色福利厚生制度」フィンテック社員10人中9人MZ世代

出勤初日に会うtoss福祉パッケージ

ペット同伴出勤可能な企業の増加

韓国農林畜産食品部の調査結果によると、2023年現在、韓国国内でペットを飼っている人口は28.2%に上ります。コロナ禍で在宅ワークを導入する企業が増加し、家での時間が増えたため、ペットを育てる環境が整い、普及率が増加したと考えられます。また、少子化の進む韓国では、ペットを家族の一員のように育て、ペットに良い食品やおもちゃを与え、サロンやおでかけなどに惜しみなくお金をかける飼い主が増えたそうです。それほどまでに、ペットが生活の中で重要視されており、就職サイト「サラミン」では、カテゴリーの1つに「ペット同伴出勤可能な企業」をまとめています。

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経営陣とのコミュニケーションイベントを企画

韓国のいくつかの大企業は、MZ世代の思考に合わせコミュニケーションイベントを開催しています。一方的に経営陣が話すのではなく、経営陣とMZ世代が交流を持つ場を作ることで、MZ世代と会社とののミスマッチを減らしたり、双方の仕事への考え方や望む会社のあり方を知る機会となると考えられます。

若者が求める職場 ―全国経済人連合会調査結果より

“結婚しない宣言”で手当と有給支給

韓国では18歳以上の人口のうち、約30%が未婚で、あえて結婚をしない非婚主義という言葉も多く広まっております。また、韓国では性的マイノリティーに対する法的な婚姻制度がありません。このようなことから、韓国の企業の一部で、”結婚しない宣言”をすることで金銭的な手当てや有給など、結婚や子育てに関連する福利厚生と同等と扱える福利厚生を支給しています。非婚手当やペット手当の支給、休暇の追加付与など、内容は企業によって様々です。多様性を受け入れているという点で、自身の価値観とマッチしており働きたいと感じる志願者も多く、社内でも長期勤務者が増えたそうです。

“結婚しません”宣言で手当支給 有休も?変わる韓国企業

まとめ 

いかがでしたか。日本でも若者世代の離職が問題視されておりますが、韓国でも同様のようです。仕事中毒を意味するワーカーホリックという言葉もしばしば飛び交う韓国ですが、Z世代若が望むのは趣味や目標といったプライベートが充実した社会人ライフのようです。今回の記事が韓国人の採用と長期的な雇用に貢献できますと幸いです。

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