なぜ日本に?韓国スタートアップ企業の成長

今、日韓経済においてホットな話題といえるのが「韓国スタートアップ企業の成長」や「スタートアップ企業の日本進出」です。NHKニュースでも取り上げられ、k-pop市場はもちろん、コスメやファッション、IT企業などの日本進出が特集されました。*1

この記事では、なぜ今韓国のスタートアップ企業が成長しているのか、そしてなぜ日本進出する企業が増えているのかなどについて見ていこうと思います。

韓国のスタートアップ企業の成長

韓国では今、スタートアップへの挑戦に積極的であり、その結果ユニコーン企業が増えています。ユニコーン企業とは、創業10年以内にして10億ドル以上の評価額が付けられている非上場のベンチャー企業のことをいいます。韓国のユニコーン企業数は14社(2023年1月時点)となり、世界でもトップ10に入る多さです。一方、日本のユニコーン企業は6社(2023年4月時点)と言われており、日韓の経済規模を鑑みても、韓国がいかにスタートアップに力をいれているかが分かると思います。更に、JETRO(日本貿易振興機構)より発表されたレポートによると*2 、2023年にアメリカ・ラスベガスで行われた世界最大のハイテク見本市のCES(米国各地で毎年数回開催される家電製品中心の見本市)では、韓国がベスト・オブ・イノベーション賞の最多受賞国なり、受賞した韓国企業9社のうち5社がスタートアップ企業でした。このような結果を見ても、韓国スタートアップ企業の技術力の高さが感じられます。一方で、米国などに比べまだ海外進出が進んでいないなどの課題もあります。

右図*2/注:CBインサイツに掲載されたユニコーン企業数の比較。出所:中小・ベンチャー企業部プレスリリース

政府も力を入れている!

ここまで、韓国のスタートアップ企業の成長を見てきましたが、なぜ韓国のスタートアップ企業はここまで成長を遂げられたのでしょうか。大きな要因として、韓国政府による手厚い支援が挙げられます。文在寅・前政権では、中小ベンチャー企業への支援を強化するため、中小ベンチャー企業庁を中小ベンチャー企業部に格上げし、中小企業、スタートアップ企業、ユニコーン企業に対し、前例がないと言われるほどの破格的な支援を行ってきました。尹錫悦・現政権でも支援は続いており、「中小企業育成総合計画2023〜2025」と呼ばれる目標を発表しました。この計画には、今後5年間、先進スタートアップ企業1000社に2兆ウォン(約2194億円)の投資をする他、日本を含めた海外進出を支援する政策も含まれています。

進む日本進出

緊縮財政でグローバルスタートアップ投資が萎縮する中、日本は金利引き下げ政策を継続しているため、投資金が集まる日本市場に進出をする韓国スタートアップが増えています。スタートアップ企業が海外進出を検討する際、以前は米国やシンガポールが候補に挙がることが多くありました。しかし岸田首相就任以後、スタートアップ支援政策が拡大し、今後5年間にスタートアップへの投資規模を現在の10倍水準である10兆円に増やすことを発表するなど、日本国内の政策もスタートアップ企業の日本進出を後押ししています。このほか、韓国政府機関がスタートアップの日本進出プログラムの実施や、日韓の関係改善ムードも相まって、韓国スタートアップ企業の日本進出が進んでいるのだと思われます。

実際に日本進出をしている企業の一例を見てみましょう。国内最大のファッションプラットフォーム企業であるムシンサは、2年前にムシンサジャパンを設立し、広報に熱をあげています。今年7月には東京でファッション・流通バイヤーを対象に国内デザイナーブランドを紹介するショールームが開催されました。去る4月には東京で一般顧客を対象にポップアップストアを運営するなど、徐々に日本でのビジネスの幅を広げています。このほかにも、ロボット・人工知能分野やITなどの分野の企業も、日本で活発に動いています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。韓国では若者の就職難が社会問題になっていて、その解決のためにもユニコーン企業の育成が重要な取り組みになっています。海外進出を課題としている韓国スタートアップですが、日本への進出や活発な投資によって韓国経済にどれほどの影響を与えられるか、今後も注目されています。

(参考)

 *1  韓国スタートアップ企業が日本進出!グローバル展開を目指して

 *2 韓国スタートアップ企業のテックトレンドとアントレプレナーシップを探る | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

 

(その他参考記事)