日本の労働人口減少とともに、日本国内で働く外国籍の方が増加しています。そんな外国人人材が日本で就職するにあたってほとんどの方が日本語能力試験に挑戦しています。
今回は、日本就職を目指す外国人人材が受ける日本語のテストについてご紹介いたします。
N1とN2の違いって実際にどれくらいあるの?JPTってなに?JLPTとどう違うの?といった疑問にお答えできる内容になっております。
1.JLPTとJPTの違い
・開催回数と開催国の違い
JLPTは日本で年に2回開催(2020年はコロナウイルスの影響により変更されています)されています。それに対して、JPTは日本で年12回実施しております。JPTのほうが開催回数が多いので常に最新の日本語レベルをはかることができるといえるでしょう。
また、開催国にも大きな違いがあり、JLPTは日本以外にも約90ヵ国で実施されており、世界各国で試験を受けることができますが、JPTは主にアジア圏で開催されてます。
(現在はタイ、ベトナム、韓国、インドネシア、中国、香港)
・出題形式の違い
JLPTは英語の試験で例えると英検のように級ごとで試験が分かれており、一番難しい級がN1、一番やさしい級がN5となってます。試験問題の内容は級によって少しずつ異なりますが、言語知識(文字・語彙・文法)、読解、聴解の構成です。会話や作文の試験はありません。テストの結果は得点区分ごと得点や、総合得点をもとに、合格・不合格の形で発表されます。
一方でJPTは英語の試験で例えるとTOEIC® L&R Testと同じく、聴解100問と読解100問の出題形式で、計200問で構成されています。JLPTのように級は設定されておらず、初級から上級まで全ての人が同じ問題をときます。テスト結果は、合格・不合格ではなく、聴解5点〜495点、読解5点〜495点、合計10点〜990点のスコアで5点刻みで表⽰されます。
下記がJLPTとJPTのそれぞれの級と点数の比較表になります。
JPT | JLPT |
660点~990点 | N1 |
525点~659点 | N2 |
430点~524点 | N3 |
375点~429点 | N4 |
315点~374点 | N5 |
「出典 日本語能力試験JPT ウェブサイト(https://www.jptest.jp/)」
JPTは得点が細かいので、日本語レベルをより詳しくはかることができます。
・JLPTのメリット
JLPTの試験を受けて上級であるN1やN2に合格すると、就労ビザを取得しやすくなるというメリットがあります。他にも日本国内で国家試験を受ける際にN1が受験資格となっているものがあります。
詳しくは、法務省入国管理局ホームページ(http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_3/)や厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/05/tp0525-01.html)などをご覧ください。
・JPTのメリット
JLPTと違い、5点ごとで点数が出るのでより細い日本語レベルを知ることができます。特にJLPTのN1レベルはJPTでは660点以上と満点の990点までは330点もあるので、上級者の日本語力をより詳しくはかる際にはJPTの試験の方が良いでしょう。
・JLPTとJPTの共通点
JLPT、JPTともに会話のテストや作文のテストはありません。したがって、この試験だけでは会話力や作文力の力をはかることはできません。
2.JLPTの試験内容や合格の目安
まずはN3からNまでの問題例や合格の目安をみていきましょう。
・N3について
N3はJLPTではちょうど真ん中の級になるのでまさに中級といえます。
問題例を見てみましょう。
N3ではこのように、ビジネスで使われるような日本語である御社、株式会社、拝見するなどの言葉も試験に出てきます。
認定目安は以下の通りです。
日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる・日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、 読んで理解することができる。・新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。・日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え 表現が与えられれば、要旨を理解することができる。・日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある 会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあ わせてほぼ理解できる。 |
「出典 日本語能力試験公式ウェブサイト(https://www.jlpt.jp/)」
N3を取得した方であれば、日本語をつかって働くことが可能であるといえるでしょう。業務内容や、使う日本語のレベルにもよりますが一度理解したら行える作業でしたらN3レベルの日本語で十分でしょう。
・N2について
N2からは上級レベルです。
問題例を見てみましょう。
認定目安は以下の通りです。
日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる・幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評 論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することが できる。・一般的な話題に関する読み物ものを読んで、話の流れや表現意図 を理解することができる。・日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、ま とまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人 物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
「出典 日本語能力試験公式ウェブサイト(https://www.jlpt.jp/)」
N2を取得した方であれば、一般的には日本語を使って十分に仕事ができると言われています。実際に、N2を取得して日本で内定をもらい日本で働いている方は多いです。問題例にもある通り試験でも漢字はフリガナがない状態で出てくるので、漢字の読み書きも問題ないでしょう。
・N1について
N1はJLPTの最上級です。
問題例を見てみましょう。
N1では、日本人でも間違える可能性があるほど難しい問題がでてきます。
認定目安は以下の通りです。
幅広場面で使われる日本語を理解することができる
・幅広話題について書かれた新聞の論説、評論など、やや複雑で論理的な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。
・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。
・幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
「出典 日本語能力試験公式ウェブサイト(https://www.jlpt.jp/)」
N1を取得した方は日本語でのコミュニケーションを違和感なくとることができます。ニュースや新聞など比較的難しい言葉がたくさん出てくるものも聞き取り、理解できるので仕事上で日本語使うことにおいても問題ないといえるでしょう。
また、N1では日本語特有の敬語表現も出てきますのでビジネスで使う日本語もしっかりと理解してるレベルになります。ただし、「N1やN2でも、実際の日本語力は劣る」という人材もいるので、面接で確かめることをオススメします
次の章ではJPTについてご紹介いたします。
3.JPTとは
JPTはJLPTのように級で分かれていないので、点数別レベルで見ていきましょう。
・460点以上のレベル
簡単な内容なら対応できるが、正確に表現するには支障がある。
聴解
- 簡単な日常会話なら、概要だけ理解し対応できる。
- 趣味・家族・天気等で、一般的な話題については易しい日本語で表現できる。
読解
- 平易な文章なら理解できる。
「出典 日本語能力試験JPT ウェブサイト(https://www.jptest.jp/)」
中級レベルです。N3と同レベルの目安が430点以上であることを考慮すると、430点~460点の方は中級と上級の間くらいと言えるでしょう。人によっては、この段階で簡単な会話であればかなりスムーズにできます。
・610点以上のレベル
限られた範囲の日本語による日常会話が可能である。
聴解
- 日常的な会話をおおむね理解できる。
- 複雑な問題になると理解に支障をきたすことがあるが、会議や商談の内容は理解できる。
読解
- 日常的な場面についての文をある程度理解できる。
- 内容が込み入った文章について、平易な表現が与えられれば理解できる。
「出典 日本語能力試験JPT ウェブサイト(https://www.jptest.jp/)」
ここからは上級です。JLPTと違ってJPTは短い時間でたくさんの問題をとかなければいけないので、正誤を即座に判断する能力も求められます。したがって、610点以上をとることができれば日本で働くうえでも簡単な業務内容であればしっかりとこなすことができるでしょう。JLPTではN2を取得するのと同等といえます。
・740点以上のレベル
幅広い場面で、日本語による適切なコミュニケーションが可能である。
聴解
- 幅広いトピックについて内容が理解できる。
- 会議・商談・電話などで、相手の話すことをおおむね理解し、答える能力がある。
読解
- 出席した会議の重要な内容を整理し直すことができる。
- 相反する意見や見解の違いを把握し、理解することができる。
「出典 日本語能力試験JPT ウェブサイト(https://www.jptest.jp/)」
740点以上を取得した方であれば、スムーズに日本語母語話者とやり取りができるくらい流暢かつ自然な日本語をつかいこなせるでしょう。自分の専門分野であれば、技術的な議論も含めて抽象的かつ具体的な話題についても日本語で行えるレベルです。
・880点以上のレベル
どのような状況でも、日本語による十分なコミュニケーションが可能である。
聴解
- いかなるトピックでも表現の微妙な違いを把握でき、正確な意思の伝達ができる。
- 話す相手にふさわしい、適切な表現・語彙を使いこなす力をもっている。
読解
- ビジネス文書・メール他、どのような文章でも正確にできる。
「出典 日本語能力試験JPT ウェブサイト(https://www.jptest.jp/)」
880点以上の方は、日本語でスムーズに違和感なくコミュニケーションがとれるでしょう。敬語もしっかりと使いこなせるビジネスレベルの日本語話者です。人によっては、ネイティブと間違われるほど上級レベルの文法や語彙も使いこなすでしょう。
問題例はこちらです。
「出典 日本語能力試験JPT ウェブサイト(https://www.jptest.jp/)」
4.まとめ
JLPTとJPTの違いをまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。JLPT、JPTともに日本語試験としての特徴はそれぞれにありますが、目安として各級、各点でどれくらいの日本語レベルがあるかを把握しておけば対象者のスクリーニングや面接するまでの一つの判断基準としてご活用いただけると思います。
ただどちらもスピーキングのテストはないので細かいコミュニケーションのスキルに関しては面接を通して判断していただくことをお勧めします。