「出来るだけ1社で長く働きたい」という考えが根強い日本ですが、近年では転職市場も拡大を続け、「終身雇用」に対する考えが変わりつつあります。一方でお隣の韓国では、どのように考えられているのでしょうか?
元々は韓国も日本同様に終身雇用を基本としており、定年も制度としてある国です。しかし実態としては、大手や中小問わず、「終身雇用制度」のある企業は非常に少なくなっているようなのです。
大企業と中小企業の格差
①給与
まず大きな違いが給与です。
https://zdnet.co.kr/view/?no=20210304091442
ジョブコリアによると、大企業の平均年収は4120万ウォン程度である一方、中小企業では2800万ウォン程度となっており、約1300万ウォンほど差があります。1300万ウォンは日本円にすると130万!生活のいろいろな面で違いが出てきそうですね。
②教育環境や待遇
韓国の中小企業の中には、昇給がない企業や福利厚生がほとんどない会社もあるようです。大企業と比べると、一人当たりの福利厚生費に約300万ウォンほど差が生じるという話もあります。また、大企業に比べて中小企業では、人事システムや研修などの働く環境がしっかりと整ってないという不利点もあります。
③安定性
半導体や電子部品など輸出がGDPの約半数を占める韓国経済ですが、内需は停滞しており、今後の米中間の貿易の鈍化によって韓国経済に大きな影響を及ぼす可能性は否定できません。大企業との差が圧倒的な韓国の中小企業は、経営悪化による解雇や倒産など、入社後のリスクの差は歴然です。
ちなみに、安定性を求めて公務員を目指す学生も多いです。他にも国や自治体が設立する公企業(交通機関系や電力会社など)も、安定しており制度も整っているため、人気があります。
大手志向になる背景
働く上でのアドバンテージ以外に、大手志向になる社会的背景も2つあげられます。
①教育大国
まず、韓国は世界的にみても教育大国であることが一つの理由としてあります。大学進学率が高いことからわかるように、良い大学に入るための勉強に全身全霊を注ぎます。頑張って勉強し、良い大学に入った学生は、これまでの努力を無駄にしたくないという思いから、上記で説明したような給料や環境があまり良くない中小企業よりも、好待遇の大企業に入りたいと考えるようです。
②ステータス
大企業に入ると、「社会的に認められる」という利点もあります。韓国人は、家族や友人、恋人など周りの目を気にする人が多い文化にあります。そのため、大企業に入って周りに認められたいと考える人が多いようです。韓国でいわゆる ”大企業” と言われるものは、世界的にも有名であるサムスンやLG、または財閥グループ、カカオやネイバーなどが挙げられます。他にも、近年伸びているペダルやク―パンなどのITベンチャーも人気が出てきていますが、採用枠が少なく、非常に狭き門だと言えます。
キャリアアップについての考え
日本では、自己成長のために全く違う業界にチャレンジする人や、自ら会社を起こす人も増えていますが、韓国では自己成長を目的に転職を選ぶ人はまだまだ多くありません。給与は下がっても自由な働き方を求めてスタートアップ企業に転職する人も中にはいますが、ほとんどは、同業界・同業種で、給与アップなど条件面での向上を求めて、より競争力のある大企業を目指して活動するようです。
収入や福利厚生面などで、より良い就業環境を求めて転職活動するのは一般的で、ひとつの会社でずっと働き続けることも少ないとのこと。職をコロコロ変えることに対して世間的に悪いイメージもないといいます。
逆に、大企業に就職した人で離職する割合は少ない傾向にあります。所属部署での昇給、または部署異動などで経験を積むことでキャリアアップを目指します。
成績を理由に会社から退職を言い渡されることもそれなりにあるようなので、全体的に日本よりシビアな環境の中で、かつ大手と中小に雲泥の差がある、韓国ならではの堅実なキャリア思考だと感じました。
まとめ
今回は韓国でのキャリアに対する考え方についてまとめてみました!終身雇用や年功序列への意識が変わってきた日本では、安定性よりも自己成長できる企業や実力主義の企業の人気が強まっていますが、韓国では今まで述べてきたような背景から、まだまだ「安定性」のある企業が好まれるようです。
しかし、大企業に入社すれば安定は保証されますが、より上を目指す優秀な同僚たちとの厳しい競争が待っています。韓国でキャリアアップを目指すには、なかなか厳しい現実が待っているのだと感じました。