2030年には20倍!? 韓国AI市場とエンターテインメント

韓国はキャッシュレス決済などのデジタル化が世界的に見ても大いに進んでいる国です。そんな韓国では、AIの領域もまた大きな伸長をみせています。世界でAIの市場需要は2023年には106億米ドルだったものが、2030年には2110億米ドルになると予測されています。韓国でも2020年に約1兆9500億ウォンだったAI産業全体の売上高が22年には約4兆ウォンに倍増するなど、まさに今ホットな市場と言えるでしょう。科学技術情報通信省と韓国知能情報社会振興院が行った「2022年のインターネット利用実態調査」によると、韓国でのメタバースサービスの利用率は11%、AIサービスの利用率は42.4%と前年比10%伸びていたとのことです。特に、生成型AIは利用率が高く、韓国の10代・20代の生成AI使用率は49%と46%でした。このように若者の積極的な使用が見られる中、エンタメ領域でもメタバースやAIは興味深い活用がされているようです。本記事ではその例をいくつかご紹介したいと思います。

自分の顔そっくりに!AIプロフィール

現在では世界で4億人以上が使用する、韓国発ARカメラアプリ『SNOW』(日本では国内累計DL数5000万)。豊富な顔認識スタンプを使って動物に変身したり、様々なフィルターを使って日常をオシャレに加工できるアプリです。このSNOWも、2023年に生成AIを活用したサービスを搭載しました。その名も「AIプロフィール」です。自身の写真を選択し、一定時間待つと、自分の顔をもとにAIポートレートを作成してくれるというものです。

実際に生成される画像は、美化しながらも面影はしっかり残っているので、「すごく盛れている自分」という印象を持つかもしれません。かしこまったものからカジュアルなものまで、一度で様々な角度・雰囲気の画像を生成してくれるので、SNSのプロフィール写真に用いている人も多いようです。「AIプロフィール」の他にも、高校生らしいビジュアルになるAIティーン、より三次元っぽいAIアバターなど、多様なテーマが提供されています。

生成音声で曲作りが流行

画像だけではなく音楽の領域でも生成AIは流行っているようです。AI技術を用いて特定の歌手の声をシミュレートし、任意の曲をカバーしたものが動画サイト上に一般ユーザーによってアップされています。韓国の国民的歌手IUの歌声をカバーしたものや、日本にでも人気の高いガールズグループ「NewJeans」のメンバーであるハニの歌声による「愛を伝えたいだとか」(あいみょん)など、中には数十万回再生を記録するほど話題を集めているものもあるようです。どんな技術が用いられているかというと、AIが特定の歌手のオーディオサンプルから歌唱技術や音声特徴を学習し、声や歌い方を真似た音声を生成しているようです。専用のソフトではK-POPアーティストの歌声も提供されており、カバーしたい曲の音源と歌手を組み合わせることで、誰でもこういった音楽を作ることができます。細やかな歌い方や息遣いまで再現されているので、一度聞いただけでは本人だと勘違いしてしまうかもしれないですね。夢のような技術にも思えますが、歌手本人の許諾なしにインターネット上にアップロードできてしまうことから、著作権に関する懸念点も残っているようです。

バーチャルアイドルも登場

こちらの写真は、2023年3月にデビューした”MAVE:”という「AIガールズグループ」。本物のK-POPアイドルのようなリアルなビジュアルですが、実は彼女らはデジタル技術で制作されたバーチャルヒューマンなのです。(https://ja.wikipedia.org/wiki/MAVE:)

ネットマーブルF&C子会社メタバースエンターテインメントとカカオエンターテインメントが100億ウォンの製作費をかけて誕生させたこちらのグループ。デビュー曲「PANDORA」のミュージックビデオは2週間で1000万ビューを突破し、「ショー!音楽中心」などの国民的音楽番組にも出演するなど、リアルのアーティストと遜色ない音楽活動を行っています。

バーチャルアーティストの利点として、生身の体がないために現実の人間にはできないような活動が可能になるようです。まず言語の問題や地理的な条件に関わらず、世界中のファンを獲得することができます。現実のK-POPアイドルグループでも、世界でヒットするために日本や中国などグローバルなメンバーが集められています。さらにメタバースの活用によって、仮想空間でファンと交流したり、NFTを活用したグッズの売買するなど、新たな市場の創出が可能。人間にはできない高難度のパフォーマンスが可能になることや、メンバーごとに実力に差が出ないことも強みだと言われています。

このように、企業もAIや高い技術力を用いて、新たなエンタメの創出に取り組んでいる例があるようです。製作コストが大きいためか、デビュー作以降のリリースはまだありませんが、今後の活躍が期待されます。

著作権の問題

先進技術の発展に付いて回るのが、やはり著作権の問題です。ニューヨークタイムズはAI学習に自社のニュースコンテンツを使用したとして、「Chat GPT」を作ったオープンAIとマイクロソフトを相手に数十億ドルの訴訟を進めています。世界中で著作権の議論や法的なイシューが巻き起こっている状況下で、韓国放送協会などの韓国国内のマスコミは、ネイバーやマイクロソフトなどと著作権料をめぐって議論を進めています。文化体育観光部は「AIの創作物は著作権を認めない」という内容の基準を出してはいますが、部署別にも立場が分かれ、まだ明確な指針づくりはできていない状況のようです。著作権紛争に対するバランスの取れた解決策づくりが急がれています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。世界的なAI市場の急拡大が起こっている中で、韓国はビジネス領域でその潮流に乗ることはもちろん、若者に人気なエンタメでも多様に活用されていることが分かりました。流行にいち早く反応する韓国の国民性が現れているようにも思えますね。著作権など法整備の課題は残っているようですが、今後のAIのエンタメ活用はどのようになるものか、期待が高まります。

参考文献

韓国「AI使ってみた」は4割 ネット新技術、日常生活に拡散傾向 – DG Lab Haus

「韓国AI技術、5年間で最も大きく発展」 | 亜洲日報

韓国10~20代、半数が「生成AI使ってみた」…信頼度「満足できない」(KOREA WAVE) – Yahoo!ニュース

想像以上の仕上がりに驚くかも!話題の『AIプロフィール』を「SNOW」「LINE」「AIピカソ」で比べたよ – isuta(イスタ)

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