昨年2023年時点で、日本で働く外国人労働者は200万人を突破しました。今後も外国人採用は上昇傾向にあると予想されており、多国籍な方々と仕事をする機会も増えていくと思われます。今回の記事では、実際に日本人と外国人が一緒に仕事をする中で起きた問題を取り上げながら、中でも韓国人と一緒に仕事をする際に知っておきたいポイントについて解説していきます。
知っておきたい「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」
普段あまり聞きなれない言葉ですが、外国人採用を検討されている場合はぜひ知っておいていただきたい用語です。コンテクスト(context)とは、背景や文脈を意味する英単語です。
ハイコンテクスト(high-context)とは、コミュニケーションの背景や文脈が共有されている割合が高い状態で、いわゆる「空気を読む・行間を読む」などの共通認識がある前提なので言葉にしなくても意味が通じることが特徴です。
その逆にあるローコンテクスト(low-context)とは、背景や文脈の共有が少ない状態で言語コミュニケーションに重きをおく状態のことです。特に英語圏での言葉に重きがおかれる背景として、複数の民族・移民の多さがあります。共通言語がないため言葉の背景や文脈に依存せず、明確に言葉で示すことが重視されたと言われています。
重要なのが、どちらが良い、悪いではないということ。母国が異なり文化が異なる人材とコミュニケーションを取る際に、このコンテクストの特徴を理解しておくことをお勧めします。
【ハイコンテクスト文化】主に日本、韓国などアジアの国々
ー話した言葉の背景、前後関係を共通した認識を持っていることを前提に話す文化
【ローコンテクスト文化】主に英語圏
ー話した言葉そのものを文字通りにとらえる文化
お悩み事例1ー指示どおりの結果にならない
日本人である上司が日本語が母語でない部下に対して指示を出したが、
その部下が指示とはまったく違う事をしてしまった(コミュニケーションのすれ違い)
通常は、ハイコンテクスト文化(日本語)とローコンテクスト文化(英語圏)を比較され、日本語のハイコンテクストで会話をしても英語圏の人たちにうまく伝わらないという事例が紹介されます。しかし、実は日本と韓国のようなハイコンテクスト文化同士でも、すれ違いが良く起きると言われているそうです。なぜなら、日韓の間で言葉の背景や前後関係の認識が違い、伝えた側と伝えられた側がイメージしている行間が全然違ってしまっている可能性があるからです。
ハイコンテクスト文化同士では、お互い自分たちが持つ常識への依存度が高い為、論理的に丁寧に粘り強く説明して相手に理解してもらう努力はあまりしません。そのため、互いの認識の違いはぶつかるまで表面化しない場合が多く、ぶつかると感情的になって修復が難しくなり、さらに相互理解は遠のきます。
対策としては、日本のコミュニケーションの取り方が世界の中では特殊な文化であることを認識し、やりすぎだと思うぐらい詳細に話すことが大切だそうです。日本語は、日本語を話す単一民族内で日本文化という特有の価値観の中で暮らし、統一された教育を受け、みんなと同じことをすることを良しとする文化の中で培われたコミュニケーション言語であるため、どんな文化の人にも伝わり、分かるように詳しく話すことが大切であるようです。
「5w1H」の法則のように、いつ、誰が、どのように、いつまでにを具体的に伝え、なぜこれを行うのか前後関係も付け加えて話をすると、コミュニケーションのすれ違いを防ぐことができるとも言われているようです。
お悩み事例2ー時間をかけても結果が伴わない
日本人上司が、日本語が母語でない部下に対して最終的な仕上がりまでの裁量を任せると、部下は雑に仕事をしている訳ではないのに、結果的にできていないという事例。
この事例では「スケジュール通りの進行管理」を良しとする習慣と「より大事なことに時間を多くかける」習慣の違いによるすれ違いが起きていると考えられるそうです。日本の仕事の進め方(時間の使い方)の特徴として、スケジュール通りに決められたことを順番に行っていくことを良しとするビジネス習慣がありますが、これは世界にとっては当たり前でなく、アジアの中では日本とシンガポールぐらいだそうです。また、何をもって「できる状態」なのかという認識のズレも原因の一つと考えられるようです。
【スケジュールに関する意識の違い】
- 日本→スケジュール通りに決められたことを順番に行っていくことを良しとするのは、世界的に見るとレアケース
- 韓国など他のアジア諸国→より大事なことに時間を多くかける。会議は時間内に結論を出すより、重要なポイントの議論を深めるやり方
目的に向かって着実に進むことを好み、時間通りであることに価値が置かれる日本の仕事のやり方は、特に韓国人からすれば、細かいスケジュール通りに実行しようとして変化を嫌うように見えるかもしれません。
一方で韓国人は素早く決断しますが、一度決定したことでも簡単に変更する傾向があり、柔軟性を重視します。そのため、日本人から見たら、計画していてもなかなかその通りに進まなかったり、時間にもルーズだったりする印象になってしまうことがあります。
対応策としては、短いスパンで進歩を確認し、できるようになったら少しずつ間隔を延ばしてコミュニケーションの取り方を改善していくことが大切とのこと。脱線していかないように進捗報告・確認をこまめにし、事前に相談してもらうようにすると良いようです。仕事をするにあたっての「大事だと思うこと」は国や文化によって異なるため、「できている」の定義も異なります。その為、依頼した仕事の大事なところはどこか、どう仕上げるべきかを改めて確認することが大切だそうです。
お悩み事例3ー勝手にやり方を変えることがある
会議で決まった業務を、チームで役割分担しながら進めていく際、日本語が母語でない社員が途中でやり方を変えたり、指示したことと違う方法で進めたりしてしまったという事例。(いわゆる報・連・相が無い)
この事例では、決定プロセスに対する考え方がそれぞれで違うことによるすれ違いが起きていると考えられるそうです。
【決定プロセスの考え方】
- 日本→合意形成型。みんなで決めて仕事を進める(アジアではレアケース)自分で勝手に決めないで、上司や周りのメンバーに相談するという行為がないと仕事がやりにくいという習慣がある
- 韓国→決裁者判断型。仕事において、権限の範囲内で自分が責任を持って決断し、役割を担うべきということが常識。
日本においては、社内の担当者、担当部、担当役員、取締役会など、各部門で稟議を行い、その結果として会社の意思決定がなされることが多くあります。しかし、韓国においては、代表取締役などのトップが会社の意思決定を行い、それに合わせて社内が対応していくということがよく見られます。このようなボトムアップ型とトップダウン型の意思決定の違いを双方が理解していなかったために、日韓ビジネスにおいてトラブルが生じることがあります。また、日本は上下関係や権限がはっきりしているヒエラルキー型組織であるにもかかわらず、権限がはっきりしておらず決定プロセスは「合意形成型」であるため、韓国人を始めとした外国籍の人たちが混乱することがあるようです。
対策としては「報・連・相」を「権限と許可」に置き換えて考えることが重要であるそうです。ここまでは自分で決めていいという権限を設定し、そうでないものは一度必ず許可を取らなければならない仕組みを作るといいようです。また、日本ではみんなで同意しながら仕事を進めていく考え方をすると理解してもらうのと同時に、日本人も日本型の意思決定システムは日本固有の組織習慣で、外国人にとって経験のない職場環境であると理解することが大切だそうです。
まとめ
日本と韓国は地理的に近く、似た文化も多いですが、だからこそ「小さな違い」を積極的に知ろうとせずにすれ違いが起きてしまうということがあるのではないでしょうか。異文化を理解するには、「相手の文化は違う」と認識した上でお互いを知る努力をしていくことが求められます。韓国人材を採用される際、ぜひ参考にしてみてください!
<参考文献>
https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/know-how/4740
https://gentosha-go.com/articles/-/15927
https://global-saponet.mgl.mynavi.jp/know-how/5263