行政システムと教育の視点から見る韓国のデジタル化

IT先進国として、名高い韓国。The Networked Readiness Index(NRI)によると、2022年の各国のIT競争力スコアは、韓国が9位、日本が世界13位という結果になりました(1位はアメリカ)。また、弊社でもエンジニアとして日本就職を成功させる韓国人学生が多く、韓国のIT競争力の高さを感じさせられます。今回は、韓国がIT先進国であるその理由・背景を、主に「行政システム」と「教育」という面から見ていきたいと思います。

世界でもトップレベルの電子政府

韓国は2001年、行政手続きを電子申請に統一し、行政事務は原則として電子処理化することを定めた「電子政府法」を制定しました。この法律が、韓国で行政サービスのデジタル化が進んだ最大の理由となっています。電子政府法は、行政の業務効率やサービス向上を目的としており、現在も様々な取り組みが行われています。その取り組みの一例として、「政府24」(行政手続きポータブルサイト)を紹介します。

このサイトでは、住民登録謄本や土地台帳、新型コロナウイルスのワクチン接種証明、納税証明などの証明書を取得でき、さらに横断的な手続き(ワンストップ手続き)も可能となっています。ワンストップ手続きでは、個人のライフステージごとに申請をすることができ、例えば出産の場合だと養育手当、児童手当の手続きなどが一回の申請で完結します。また、スマートフォンを使った電子申請システムも進んでいます。「政府24」というアプリから、住民登録謄本・抄本や、健康保険資格確認書といった電子証明書の発行が申請できます。これらの施策により、生活困窮者などが迅速に資金を受け取る上で大きく貢献した他、紙の証明書発行数の減少により大幅なコストの削減に繋がっています。

国が戦略的にデジタル化を進める強み

ここまで見てきたように、韓国の行政が一丸となってデジタル化を進めていることが分かります。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が率いる現政権でも、2022年に「大韓民国デジタル化戦略」を発表し、総合的な国家デジタル戦略ともいえる戦略を打ち出しています。国を挙げてデジタル化を進める韓国ですが、なぜここまで成功を納めているのでしょうか。

理由の一つとして、情報の共同利用に向けて中央政府が標準システムを開発し、トップダウン式にシステムを一本化したことが挙げられます。日本では各自治体ごとに異なるシステムを構築してきた故、システム構築がバラバラであり一本化が困難な状況である半面、韓国では全国単位で一元化して処理されています。この韓国の電子政府の指揮をとる専門家集団は、博士号を持つIT専門家を主として構成されているといい、国としての力の入れようが伺えます。

先進的な教育現場

このようなデジタル化は、教育現場でも積極的に行われています。2000年代に入ると全国各地の学校で電子黒板、タブレットなどデジタル教材が配備されました。教員には定期的にICT活用のための研修を実施し、教える側の意識や教授スキルのレベルアップを図りました。「紙」を基本として学校教育が行われていた日本では、コロナ禍でICTの導入が遅れた弊害が顕著に現れましたが、韓国では教員に対するサポートもきちんと行われていたため、日本に比べて対応がスムーズだったと言われています。最新式のICT機器を導入するだけでなく、このような支援も厚く行う部分は、韓国の強みといえるでしょう。

また、各方面におけるコーディング教育に力をいれているのも、韓国の教育現場での特徴の一つです。最近では、2025年までに小学校と中学校でコンピュータ言語でプログラムを作る「コーディング」教育が義務化されることがニュースで取り上げられました。これにより、「情報」の時間が2022年に比べ2倍になるといわれています。更に、AIなど先端分野において、博士課程を11学期(5年6カ月)で終えることのできる統合課程が導入されています。政府はこれらを通じて人工知能(AI)とモノのインターネット(IoT)など先端分野の人材100万人を養成する計画だそうです。このような事例を見ると、教育現場でもデジタル化を進めると同時に、デジタル化に対応することの人材の育成にも国が力を入れていることが分かりますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、主に「行政システム」と「教育」という面から韓国のデジタル化について見てみました。日本に比べて、政府がデジタル化や人材育成に力を入れていることが、韓国がデジタル先進国と呼ばれる所以となっているのでしょう。KORECでも、ITスキルが非常に高い韓国人学生の日本就職をサポートして参りました。エンジニアの採用など、多数実績がありますので、是非お気軽にご相談ください。

▽韓国人エンジニア採用に関しては、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。

▽韓国の電子政府ついて

電子政府サービスの利用・認識度が進展(韓国) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

▽コーディング教育の義務化

초등-중학교 ‘코딩 교육’ 2025년부터 필수과목으로|동아일보

▽政府24ホームページ

https://www.gov.kr/portal/main/nologin

▽IT競争力ランキング

IT競争力 国際ランキング・推移 – GLOBAL NOTE

【書籍】

春木育美、2020「韓国社会の現在」中央公論新社.