韓国ドラマから読み解く韓国就職事情

少し前に開催された第75回カンヌ国際映画祭で、『万引き家族』で有名な是枝裕和監督による韓国映画作品「ベイビー・ブローカー」が見事2冠に輝きました。「ベイビー・ブローカー」は実際に養護施設で育つ子供たちの話を聞いて制作されたようで、日本と比べて特別養子縁組の精度が活発な韓国の世相があらわれた映画となっています。一方、2019年に公開された「パラサイトー半地下の家族ー」では、薄暗い半地下で暮らす家族と高台の豪邸に暮らす裕福な家族との格差が描かれていました。

このように韓国の映画やドラマの中には、韓国社会の様子をとらえ表現した作品が数多くあります。そこで今回は、「就職活動」や「働くこと」をテーマにした韓国映画やドラマの中で浮かび上がる、韓国の抱える社会問題について見ていこうと思います!

韓国の就職をテーマにした韓国ドラマ

この段落では、韓国の学歴社会や就職を語る上で欠かせない3作品を紹介したいと思います。

  • 『ミセン』

まず最初に紹介するのは、学生インターン時代から社会人になってまでの仕事にフォーカスしたヒューマンドラマ「未生-ミセン-」。2015年にコリアドラマアワードの作品賞も受賞し社会現象になった人気作です。

このドラマは、韓国の就活がどのように進むのか知りたい方におすすめのドラマです。日本では2、3日就活生に業務を体験してもらって、ESやwebテスト、面接という流れが一般的です。しかしながら、韓国では就活中の学生・既卒生をインターンとして実際に現場で仕事をしてもらい、その貢献度で採用までつなげるというケースが多いです。また、「スペック」採用が根付いている韓国ではインターンシップの経験が企業の評価基準に加わることが多く、企業で一定期間インターンシップの経験を積む就活生が多くいます。

「ミセン」ではインターンとして入社してから本採用につながるまでの流れが取り上げられており、学歴がない就活生の苦悩や就活生の学歴への熱意が表現されています。なお、近年ではインターンの競争率が上がっており、ある韓国の民間企業が行うインターンの最高倍率は200倍を超えるとも!インターンとして働くことすら、想像以上に過酷な世界になりつつあります。

미생 포스터
競争の激しい韓国就職の世界で懸命にしがみつく若者のストーリーに、涙すること間違いなし!韓国のスペック採用や韓国就職の過程(インターン~本採用)について気になる方はもちろん、部下と上司の関係性や、男女のキャリアの差、正社員と契約社員など、現代の社会における様々な立場の働き方に問題提起をしており、韓国人採用を考える人事の方にぜひ見てほしい作品です。

  • 『SKYキャッスル 上流階級の妻たち』

2つ目に紹介するのは、名門大学に子どもを入学させる為に上流階級の親たちが奔走するさまを描いた「SKYキャッスル 上流階級の妻たち」。韓国で視聴率22.3%を超えた大人気ドラマです。

題名になっているSKYはそれぞれ、”S=ソウル大学”、”K=高麗大学”、”Y=延世大学”のことで韓国の3大名門大学のことです。ソウル大学は日本で言う東大のようなもので、スペックが重要視されている韓国では、大学ネームも非常に重要視されています。

SKYキャッスルでは、上流階級の親たちが息子・娘をソウル大学に入学させるために、あの手この手を使って奮闘します。入学させるため、勉学のサポートだけでなく、受験コーディネーターの雇用や受験コーディネーターの雇用や一流大学に志望した子どもを持つ親とのつながりを持つ、子供と一緒に奉仕活動に参加するなど様々な手段で合格に向けて奔走します。韓国では大卒の就職率が低く、大企業に就職するのは狭き門とよく聞きますが、ソウル大学に行くことができる人もほんの一握りです。ソウル大学に入学する=一流のスペックを手に入れる、になるので、親たちもわが子の受験のために大奔走するわけです。

ドラマならではの少し過剰な部分もありますが、「韓国社会を知るために必須」といわれるほどリアルなドラマ。韓国のスペック採用や大学受験について知りたい方に是非お勧めしたい作品です。

  • 『会社行きたくない』

3つ目にご紹介するのは、韓国の会社で働いている人のリアルを再現した「会社行きたくない」です。毎日通勤する社会人の方であれば、一度は抱いたであろう「会社に行きたくない」という感情。そんな思いを抱くサラリーマンの素顔と苦悩を描くリアルオフィスドラマです。

このドラマは、とある文具メーカーの営業企画部を舞台に、超高速で昇進記録をつくった次長、その勢いから自分の立場を守ろうとする部長、超マイペースのゆとり新入社員から理不尽な上司まで個性の強い社員たちが様々なドラマを繰り広げるさまを描いています。日本と変わらない休憩時間のやり取りにクスっとする部分もあれば、個々の成長に感動するシーンも!

こちらは、韓国学生の就活動向を知るというよりも、韓国で働くとはどのようなものかイメージをつかみたい方におすすめのドラマです。日本でもよく見かけるような光景がたくさんあり、ついつい共感してしまう人もいるのではないでしょうか。

厳しい現代社会で働くすべての人々に勇気と笑いを届ける共感度120%のリアルオフィスドラマです。リアルな現代の会社員たちの葛藤や悩みを表現し、外国人から見る韓国社会文化や職場で生きるコツなど為になる話題が盛りだくさんとなっています。

韓ドラを見て感じた韓国の国民性

数多くの韓国ドラマをみて、韓国人の友人とも交流してきた私ですが、未だにドラマのシーンや友人と関わる中で「へぇ、そうなんだな」と意外に思ったり、改めて感じたりすることがあります。

この段落では、ドラマから感じとれる韓国の国民性をいくつか紹介したいと思います!

  • ①年上の人への敬意

1つ目は、目上の方を敬うという点です。韓国は儒教の国。初対面の人と話すとき、まず年齢を聞くことが多いです。また、自分の両親のことを人に話すとき「お父様/お母様」というように敬称をつけたり、お酒の席で上司がいる場合は、口元を覆いながら横を向いて飲みます。年上の方を敬うという文化が、日本よりもずっと根付いているように感じます。

  • ②自分の意見をはっきり言う

2つ目は自分の考えをはっきり言うという点です。若者の選挙関心率の高さだったり、学生のうちから海外留学や様々なボランティア、インターンシップに参加しているということから、様々なことに主体的に取り組んでいる若者が多いように感じます。自分の意見をしっかり言葉で表現する・将来を見据えて勉学や経験値を高めるために行動できるのは、私自身頑張りたいと思っているところで、それが当たり前にできている韓国学生の友達は尊敬するばかりです。

  • ③人間関係を大切にする

3つ目は仲間意識が強く、人間関係を大切にすることです。韓国ドラマを見ているとよく「ウリ=我々、私たち」という言葉が出てきます。同じ部署の人とランチに出かけたり、国民が一丸となって政治参加したりと、団体意識が高いように感じます。

まとめ

今回は、就職や働くことに関する韓国ドラマやそれにまつわる国民性についてご紹介しました。もちろん国民性といっても、同じ日本人でも様々な性格の人がいるように韓国の方も様々な性格の人がいますし、ドラマとしてデフォルメされている部分はありますが、その点は考慮しつつ、韓国人材の採用を身近に感じるためのツールの一つとして活用していただけるのではないでしょうか。

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