映画「パラサイト-半地下の家族」に見る、韓国の格差社会

皆さん、韓国の映画「パラサイト -半地下の家族-」をご覧になったことはありますか?

韓国映画史上初めて米アカデミー作品賞を受賞した有名な作品で、映画の面白さはもちろん、現代韓国の抱える社会問題を知る上で外せない、興味深い作品となっています。

今回はこの映画を通して、富裕層と貧困層の格差は、一体どのような問題を生み出しているのか、優秀だけど金銭的に厳しい状況にある人、学校に通えない人などはどこに就職しているのかなど、対策や制度についても合わせて見ていこうと思います。

1、半地下で暮らす人びとはリアル?!

映画「パラサイト-半地下の家族」より

映画「パラサイト -半地下の家族-」は、2019年5月韓国で「기생충(キセンチュン)」というタイトルで公開され、2020年1月には日本でも公開されました。米アカデミー作品賞受賞以外にも、カンヌ国際映画祭でも最高賞パルムドールを受賞しており、世界的に認められた傑作と言えます。

あらすじとしては、ソウルの半地下住宅で暮らす4人の家族が、上流家庭に潜り込むのですが、その家の地下室に住んでいた貧困夫婦と争いになり、最後には3家族入り乱れての大きな事件へと発展していきます。

当時話題になったのが、日本では馴染みのない「半地下」の家。この「半地下(반지하)」は、韓国では誰もが分かる「貧困層」を指す単語であり、わずかしか太陽の光が入り込まない半地下の狭い空間で家族が身を寄せ合って暮らす様は、なかなか衝撃的な映像でした。

しかし、実際に半地下に住む世帯は、2005年には3.7%(約58万世帯)に上ったのですが、10年後の2015年には1.9%(約36万世帯)と半減し、今では1%前後と多くはないようです。また、実際の半地下の家は、実は結構家賃が高いとの話も。

「半地下(반지하)」は、貧困層と富裕層の格差が激しく問題となっている韓国を分かりやすく表現するための素材として使われていたようです。

2、格差社会 狭すぎる富裕層への道

実際の「半地下(반지하)」がそれほど多くないとはいえ、韓国の格差社会は大きな社会問題となっています。

その背景にあるのが、強すぎる韓国財閥です。財閥の圧倒的強さに関しては今までにもお伝えしてきましたが、サムスン、ヒョンデ、LGなど、主な10の財閥だけで、韓国全体の富の4分の3を生み出しているのです。

また、所得上位10%の層が国民総所得の45%を占めているという歪な状況もあります。

そんな上位10%の豊かな生活を夢見て、韓国の学生は「大企業への入社」を必死に目指します。大学進学率は日本よりも高く、約75%という大学進学率は、OECD加盟国中でここ数年常にトップです。

一方で大学卒の就職率を見てみると、リーマンショック後に50%台に下がり、卒業後正社員になれるのは2人に1人。韓国の中央日報によると、近年でも4年制一般大学の平均就職率は67.7%(2019年時点)にとどまっており、90%超の日本の就職率を大きく下回っています。

国民の8割は大卒である一方で、彼らのうち、財閥いわゆる一流企業に入社できるのはごくわずかです。しかも、ソウル大や高麗大、延世大などの名門大学でないと、大企業への道に進むことは非常に厳しいという現実。学力があり優秀な人でも、無職のまま暮らす人や低賃金の職につく若者が多い理由に、このような背景があるのです。

さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響で、若者層の就職難はより深刻な状況です。大学生が予想する就職率は50%に満たないという話もあります。日常的な生活での困難はもちろん、経歴の空白が長引けば貧困層に定着し、「失われた世代」になる恐れも出てきます。

韓国の統計庁が発表した雇用動向によると、2021年1月の失業率は5.7%で、前年と比較して1.6ポイントも低下。失業者数は41万7000人増化の157万人で、1999年以来最多の記録となりました。輸出業の好調による急速な景気回復で、失業率、雇用率も徐々に改善傾向にありますが、新型コロナの第4次流行による影響など、引き続き予断は許されない状況です。貧困層が拡大し、一部の富裕層との格差がますます広がることへの懸念は続いています。

3、雇用安定の支援

映画「パラサイト -半地下の家族-」で半地下に住むお父さんも、事業に失敗して失業中でした。

さまざまな理由で就業していない人々の生活を守る施策の一つとして、韓国政府は「国民就業支援制度」を2021年1月から導入することを決定。これは、何らかの理由で雇用保険に加入できていない就業弱者を支援するための韓国型失業扶助の制度で、中位所得の50%(18~34歳は120%)以下の求職者に対し、最長6カ月間、月50万ウォンの求職促進手当を支給されるというもの。

また、この「国民就業支援制度」への参加者の就業を支援するため、仕事経験プログラムを新たに設立。仕事をする意欲が足りない人々に対し、NGO・公共機関等で30日前後の短期間職務経験を提供すると発表しています。さらに、就業意欲・能力はある一方、職務経験が足りない人々に対しては、就業希望分野の民間企業で3カ月前後の職務中心インターン型プログラムを提供するそうです。

低所得労働貧困層向けの就職支援対策が、韓国政府として見過ごせない課題となっているのが分かります。

4、海外就職をする人が増加。政府からの支援も。

国内での就職が厳しい韓国では、「海外就職」という選択肢が出てくるのは必然と言えるかも知れません。特に、日本で就職する韓国の若者は増加しています。

KORECを始め、若者向けの日本企業の合同説明会の開催や、若者への海外就職支援事業「K-MOVEスクール」(韓国の大学や専門学校と提携し、語学研修費など各校に学生1人当たり約80万円を支給する制度)などが充実しており、文化的な面でも韓国と似ている日本は、海外就職先として人気が高いです。

受け入れ側の国としても、外国語に堪能でかつ、真面目で優秀な韓国人材の採用に大きなメリットがあると言えるのではないでしょうか。

5、まとめ

映画「パラサイト -半地下の家族-」では、貧しい生活を送る貧困家族と裕福な上流家庭の格差が激しいように描かれていましたが、実際に半地下に住む貧困家庭は減少しており、そこまで多くないのが分かりました。

一方で、財閥など一流企業と中小企業の間に雲泥の差があるのは事実。狭き門である財閥・大企業への入社を目指すも、就活に失敗し中小企業の低賃金に苦しんだり、転職を繰り返さざるを得ないという現実があるようです。

就職率の低い韓国は国の施策として海外就職を勧めているので、コロナの影響はありますが、今後ますます海外就職が進んでいくと思われます。

韓国への就職支援という形が、韓国内の格差是正にも良い影響を与えることができればと思います。