学歴社会で就職状況の厳しい韓国では、安定して働ける公務員も人気の高い職業です。
しかし、今年5月に開催された、「9級公務員」の筆記試験(日本で言うところの国家Ⅲ種、地方初級の試験)の競争率は「27.6倍」!昨年の26.3倍をさらに上回る人気でした。
就職氷河期の中、一握りの人しか合格できない狭き門を通るべく、学生たちは日々必死に勉強しています。今回はそんな韓国の「公務員事情」について、詳しくみていきましょう!
1、韓国の公務員といえば、どんな職業?
韓国にも日本同様、国家公務員と地方公務員があり、仕組みや職業に関しては、全体的に日本とよく似ています。
韓国の公務員の特徴としては、1級から9級まで分かれていることです。試験があるのは9級、7級、5級となり、各試験に合格すれば、その受かった級から始まります。国家公務員の場合は、5級が幹部候補、(日本でいう国家Ⅰ種、いわゆる「キャリア官僚」)の試験。国家Ⅱ種が7級、国家Ⅲ種が9級にあたります。地方だと5級が地方上級、7級が地方中級、9級が地方初級です。
最も低い9級から始める人が一番多い層で、級が上がるにつれ、給与や地位なども上昇していきます。例えば、9級では、市民の対応を行う窓口相談(カウンセラー)が多く、7級になれば、ほとんどが事務職となります。他にも、日本と同じく各地域の知事や事務員、教育関係、税金事務員や警察官、消防士などが一例としてあげられます。日本と異なる面で言うと、公務員の職種の中に、軍隊や兵役関係があることです。
韓国でも、郵政、電力、ガス、交通関係など、ほぼすべての国公営企業が民営化されており、これらは「公企業」と呼ばれる民間企業になり、そこで働く人たちは公務員ではなくなっています。
2、安定して長く働ける公務員
公務員の給与についてはどうなのでしょうか?
韓国では、公務員の「級」によって給与が異なります。最も低い9級では月に170〜180万ウォン(約17〜18万円)、手取りだと約150万ウォン(約15万円)ほどになります。
1年ごとに5万ウォン(約5千円)程度の昇給があり、それとは別に級が上がれば、約50万ウォン(約5万円)ほどアップしていくそうです。長く働けば自然に給与が上がっていくシステムも、日本の公務員と同じですね。
3、韓国での公務員のイメージって?
一般的に日本の公務員は、「お役所仕事」のイメージが強いように思いますが、韓国ではどうでしょうか?
韓国でも、「安定して働ける」という部分が非常に大きいので、やはり日本と同じようなイメージがあると聞きます。民間の企業と比べて自由度は少ないものの、よほどの失敗をしない限りクビにならない公務員は、大企業の熾烈な出世競争とは無縁の世界。社会的に見ても印象が良く、育児休暇などの福利厚生や年金制度もしっかりしており、公益のために働ける魅力もあるので、多くの人にとって憧れの職業と言えると思います。
実際、韓国の子ども(中高生)に聞いた、なりたい職業アンケート※では、公務員である「教師」が不動のトップであり続けています。
※韓国教育部「初・中等進路教育現況調査2019」より
4、韓国の公務員試験は超難関!
韓国の公務員試験は、ハーバード大学の入試問題よりも難しいと言われています。もちろん級によって科目数や量が大幅に異なるため、準備期間もそれぞれですが、最も簡単な9級でも、1日に10時間、1〜2年の勉強が必要だそうです。
面白いのが、「公務員試験の予備校街」と言われる街が存在すること!ソウル市内から電車で20分ほどに位置する鷺梁津(ノリャンジン)地区には、公務員を目指す若者が集まります。予備校に通い、考試院(コシウォン)という狭い勉強部屋で節約しつつ、受験勉強に励んでいるといいます。
それほどの努力を重ねて公務員を目指すのには、やはり若年層の厳しい雇用状況が背景にあると言えます。韓国の大企業と中小企業の給与や待遇の差は非常に大きいうえ、ある程度の待遇が保障される大企業に就職できるのはほんの一部です。待遇の良くない中小企業で働くことを考えると、公務員の安定性はとても魅力なのです。
5、まとめ
今回は韓国の公務員事情についてご紹介させていただきました。
公務員に対するイメージは日本とよく似ていましたが、その倍率の高さや、そこに向かって頑張る若者の温度感は日本にはないものと感じました。
韓国では非正規雇用問題が社会問題の一つとなっており、政府が警察などの分野で公務員採用枠を広げたという話題もありました。
韓国国内の公務員人気は、今後もますます高まっていきそうです。