日本と韓国、女性の活躍について

文化や習慣などさまざまな共通点もある日本と韓国ですが、「女性の社会進出」に関してはどうでしょうか。今回は、日韓の女性の活躍の違いについてご紹介していきたいと思います!

1.日韓の女性活躍の現状

皆さん、この表をご存知でしょうか。2021年度最新版の「国別ジェンダーギャップ指数」を示したものです。この分野で世界に遅れをとっている日本は世界120位。一方、韓国も世界102位という結果になっています。

こちらは国別に、管理的職業従事者に占める女性の割合を示したもの。

主要国の中で韓国・日本ともに女性管理的職業従事者の割合は20%を切っており、女性活躍において両国ともに後進国である事実が浮かび上がります。

日本では、女性管理職を30%達成を目標にすると政府が発表していますが、未だ目標には程遠いです。

2.なぜ女性管理職が増えないのか

なぜ女性管理職が増えないのか、その背景を探っていくと日韓それぞれで長年の習慣や価値観から脱却できていないことが要因と感じます。

株式会社アイデムが出した女性活躍の調査によると、「女性管理職が少ない理由」は、「女性本人が希望しない」「女性の多くが管理職になるまでに退職する」「そもそも女性社員の比率が低い」などが上位にあがっています。管理職を希望しなかったり退職してしまったりなど、一見女性側の意思の問題ともとれますが、その背景には長期継続雇用を前提とした年功序列的な昇進システム、長時間労働や転勤を前提とした働き方、専業主婦世帯を優遇する税制や社会保険制度などが存在し、女性が管理職として活躍することの障害となっているのです。

一方韓国では、管理職に女性が占める割合が低い理由に「家父長的な社会の雰囲気」がしばしば挙がります。「男性中心の組織文化の中で(女性が)生き残る難しさ」もあるようです。

3.ジェンダーギャップ、韓国102位に躍進したわけ

年々順位を下げ続けていた日本を追い越し、ジェンダーギャップ 指数102位に躍り出た韓国。進歩を遂げた背景には、2017年に就任した文在寅(ムンジェイン)大統領の政治的な動きがありました。文在寅大統領は自ら「フェミニズム大統領」を名乗り、就任時には過去最高となる女性閣僚5名を起用。「女性優遇」ではなく「男女公正」の視点で政策を進めたため、男女両方から強い支持を得たと言います。お茶の水女子大学院の申琪榮(シンキヨン)准教授も、「経済」「政治」「教育」「健康」の4分野のうち、「政治」分野で日韓に大きな差がついたとお話しされています。※

同時に、日本と比較して非常に大きな盛り上がりを見せるのが韓国フェミニズムです。#Mee Too運動をきっかけに大きく盛り上がった「Kフェミニズム」。「82年生まれ キムジヨン」などのフェミニズム小説が流行したのも、そのような背景があります。長年続く男性優位な慣習、性暴力などの日常の生きづらさが、若者を政治へと向かわせ、社会的流れを生み出していると言えそうです。

※朝日新聞経済記事「https://digital.asahi.com/articles/ASMDK4VDGMDKUOOB007.html」より

4.韓国フェミニズムについて

「韓国フェミニズム」について、もう少し詳しくお伝えしようと思います。

前述したように、韓国の女性活躍の一因とも言える韓国フェミニズムですが、この盛り上がりには歴史的な要因が大きく関係しています。

韓国では、朝鮮戦争後の軍事体制の影響もあり、男系血統主義の家父長制家族や男尊女卑的慣行が根強く続いてきました。女性が抑圧される男性中心の社会に異議を唱え、差別や暴力に立ち向かう女性運動が活発になったのはここ数十年の話ですが、その流れが昨今のフェミニズム的考え方のベースになっているのは間違いありません。

エンタメの世界でも変化が見られます。他人の価値観に影響されない意思を持つ「強い女性」を描いた曲が、最近の韓国でのブームなのです。例えばTWICEの妹軍として世界的に有名なItzyの歌には、「他人を意識しながら生きるのは勿体ない」「私の人生よ 生きたいように生きるわ」など、強い女性を感じさせる歌詞が多く登場します。

フェミニズムを謳う女性たちの政界進出やフェミニズム文学の爆発的人気、BlackPinkやTWICE,Itzyのように世界的人気を誇る韓流アイドルたちの曲のフェミニズム的要素など、確実に韓国における女性の位置づけが変化しているのが分かり興味深いです。

ちなみに、最近の女性の躍進は「女風(ヨプン)」という言葉で表現されます。以前から母親が子どもの教育問題に熱心に取り組むことなどを指す「スカートの風 (チマッパラム) 」と いう表現はありましたが、そこには、本来家の中で家事育児に専念すべき女性が、そうした行動規範を破って“でしゃばっている”というような否定的なニュアンスが含まれていました。「女風」にはそのような意味合いが含まれていないので、これも新しいフェミニズムの「風」です。

また、「威風堂々(위풍당당)」という言葉をもじった「女風堂々(여풍당당)」という見出しは、新聞等でしばしば登場しています。さまざまな分野で新しい表現が生まれている韓国では、フェミニズム的考え方が一部の極端な話ではなく、世代性別を超えて広がっている社会の変化なのだと感じます。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。日本と韓国はともにジェンダーギャップ で世界に遅れをとっている状況ですが、フェミニズム的考えが広がり、社会的な変化が見られる韓国と比べて日本はあまり明るい材料がなく、女性活躍のハードルはまだまだ高いように感じました。

また私自身、日本での就職活動を通して感じたことは、「女性の活躍を謳う企業」は「女性が中心の組織」になっているということです。女性が優位、男性が優位という世界ではなく、全ての人が平等に活躍できる、生きやすい社会にしていくことが出来ればいいなと思います。