大学卒業後の進路として、大学院への進学か学部卒での就職で悩む方も多いと思います。
今回の記事では、まず大学院卒と学部卒の理系就職の違いについてデータを用いてお伝えします。その後に院進学のメリット・デメリットと学部卒での就職のメリット・デメリットについてお話しします。
院進卒・学部卒での理系就職の違い
ここでは、大学院卒と学部卒の就職におけるさまざまな情報をデータに基づいてお伝えします。
院進卒・学部卒での理系就職の違い①「生涯賃金収入」
まずは院卒と学部卒の生涯賃金収入についてです。
少し古い情報ですが、2014年に内閣府経済社会総合研究所が発表した論文では、学部卒の人の生涯賃金収入は、男性で2億9163万円、女性で2億6685万円。一方、大学院卒の人の生涯賃金収入は、男性で3億4009万円、女性で3億1019万円となっています。男性で4846万円、女性で4334万円の差があることが分かっています。
2021年の学歴別平均年収額では、院卒454万1000円に対し、学部卒は359万5000円です。特に女性は大学院卒と学部卒で差が大きく、院卒が400万6000円なのに対し、学部卒は288万9000円と、100万円以上の差があります。
今回の結果から、平均年収の点では院卒での就職活動が優位だと言えます。
院卒と学部卒の平均年収は性別に関わらず4000万円以上ですが、大学院への授業料が2年間で4000万円を超えることは少ないため、大学院進学は投資として十分な効果をもたらしてくれると言えます。
院進卒・学部卒での理系就職の違い②「24歳時点での平均年収」
先ほどは生涯賃金収入についてお伝えしました。ここでは大学院を卒業する24歳時点での年収をお伝えします。
厚生労働省が行った調査「令和元年賃金構造基本統計調査結果の概況」によると院卒の初任給は23万8,900円です。賞与などを含めて院卒の新卒年収は平均309万円です。
24歳時点での比較前に学部卒の初任給もお伝えします。先ほどの厚生労働省の調査によると学部卒の初任給は21万200円です。賞与などを含めて学部卒の新卒年収は平均で300万円です。
最後に24歳時点での学部卒の平均年収は平均で325万です。24歳時点では大学院卒よりも学部卒の方が高いという結果になりました。2年早く社会人になっているため、会社からの評価が積み重なっていることが原因と考えられます。
院進のメリット・デメリット
ここでは大学院へ進学することのメリット3点とデメリット2点をお伝えします。
院進のメリット①「研究職に就職できる」
研究職の中には、修士以上の学位を持っていなければ応募できない職種も多く存在しています。そのため、研究職として就職したい場合には大学院へ進学しておくことをおすすめします。
近年では日本企業でも専門性の高い人材を求める傾向が強くなりつつあります。従来のジョブローテーションを通じてゼネラリストを育成するという姿勢から専門性の高い人材育成へと方向転換していることは、大学院卒で専門性を持った学生の価値が今後ますます向上していくことへの追い風になるかもしれません。
院進のメリット②「生涯賃金収入が高い」
前述の通り、院進学をした場合には学部卒と比較して、4000万円以上も平均生涯賃金収入が高くなります。24歳時点での平均年収では学部卒より低いですが、長い目でみた場合には院進学しておくことで生涯賃金収入を上げることができます。
院進のメリット③「好きなことに没頭できる時間がある」
研究が好きな人にとって大学院は非常に有意義な時間になることでしょう。2年間は好きな研究に遠慮なく費やすことができます。学部生の頃と比べると論文発表の機会なども増え、ご自身の研究成果が世の中に認められるような体験もできるかもしれません。
院進のデメリット①「在学期間にお金がかかる」
大学院に進学する場合、国立大学でも2年間で約135万円の学費がかかります。学費以外にも家賃や食費など生活を送るためにはお金がかかります。しかし、進学を迷っている理由がお金なのであれば奨学金の制度を利用するなどの対策が可能です。
院進のデメリット②「社会に出るのが2年遅くなる」
2年間研究をした人よりも2年間社会人をした人の方が、社会人としてのスキルを身につけることができます。場合によっては若い時の2年間の差が気になる方もいるかもしれません。
しかし、研究職としての就職を考えているのであれば社会人としてのスキルを身につけるよりも、研究の基礎を身につけるために院進学をすることが良い選択かもしれません。ご自身の歩みたい人生設計に合わせて進学か就職かを考えてみてください。
学部卒のメリット・デメリット
ここでは学部卒のメリットとデメリットをお伝えします。
学部卒のメリット①「早く社会人としてのスキルが身につく」
学部卒は院卒と比較して2年早く社会に出ることができます。つまり、2年早く社会人スキルを身につけることが可能です。社会人として経験を積み、活躍したいという方は院進よりも学部卒就職が向いていると言えます。
学部卒のメリット②「早く自立できる」
社会に出て給与をもらい始めることで親の援助なく生きていくことができるようになります。少しでも早く自立したいと考えている人は院進ではなく学部卒での就職を視野に入れると良いでしょう。
学部卒のデメリット①「応募できない職種がある」
学部卒では応募できない職種があります。研究職の応募要件の中には、修士以上の学位を持つことを条件としている場合もあるため、研究職に就職したい場合には大学院への進学を目指しましょう。
この点は研究職に興味がない場合には大きなデメリットにはなりません。研究職以外の職種でキャリアをスタートさせようと考えている人は学部卒で就職をして社会人としてのスキルを磨くといいかもしれません。
学部卒のデメリット②「生涯賃金収入」
学部卒は院卒と比べると平均で4000万円も低い生涯賃金収入になります。しかし、学部卒の平均年収は日本全体の平均年収433万円を上回っています。(参照:民間給与実態統計調査)
大学院卒と比較すると生涯賃金収入が少なくなりますが、十分な収入を得られると考えて問題ありません。お金はそこそこあれば十分だと考えている人にとっては大きなデメリットにはならないでしょう。
2022年度大学院卒の先輩の声
今回の記事を執筆するにあたり、大学院卒の先輩3名に本音を伺ってきました。さまざまな声がありますのでぜひ参考にしていただけますと幸いです。
学部卒のタイミングで就職活動をしたが、自分は大学院で学びたいことがあったため院進を決意した。1度就活を経験しており、院卒での就職活動はあまり苦労しなかったので学部卒のタイミングで就職活動をしておいて良かったと感じている。
世の中で言われている、大学院に行けば職種の選択幅が広がるというのは実際には少し違うのかなと思っている。大学院までいくと専門性が高まるため専門分野以外の就職をする人が少なくなる。つまり、自ら就職の選択肢を狭めてしまう人が多いようには感じている。
まとめ
今回は大学院への進学と学部卒就活について、データからわかる院卒と学部卒の違いをお伝えした後にそれぞれのメリットデメリットについてお伝えしました。最後には、院進学した先輩からの声をお届けしています。
記事を読んで院進学が良いと感じた人も学部卒での就職が良いと感じた人もいるかと思います。まだまだどちらにするか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
筆者の意見としては、院進学の準備も就職活動の準備も並行して行うことが良いのではないかと考えています。将来の進路について本気で考えたいという方はぜひALPSCHOOLの無料面談にお申し込みください。本気でキャリアを考えるお手伝いをさせていただきます。