音楽やドラマ、ファッションまで、近年人気が高まる韓国カルチャー。その勢いは日本のみならず、今や世界的に広まっています。times誌が発表した「2023年米で影響力のあるアジア人100人」には、NewJeansやカカオエンタテインメントのチャン・ユンジュン氏がノミネートされるなど、幅広い分野で韓国人の存在感が高まっています。今回の記事では、韓国人材の海外進出が高まる裏側を探っていきます!
日本・韓国の若者の「海外出稼ぎ」事情
近年、日本・韓国で海外就職の割合が増加傾向にあるようです。日本では、2020年から2022年前半にかけて新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって一時的に海外留学が下火となりましたが、2022年後半からは水際対策の緩和もあり、再び留学への関心が高まっています。Bloomberg2024年4月15日の記事からも円安や賃金の伸び悩みから、国内の労働環境に懸念を抱く若者の間でワーキングホリデー制度を利用するなど「海外出稼ぎ」を志向する動きも見られるようです。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-15/SBM1U5T0G1KW00
出典:日本人の若者が海外に出稼ぎへ 増加の裏側にある労働問題 – 貧困や格差のない社会へ – NHK みんなでプラス
同様に韓国でも、日本と同じく海外就職の割合が増加しています。韓国学生の海外就職の国別ランキング – 韓国人採用ナビでも取り扱ったように、海外就職を目指す韓国学生が年々増加していることがうかがえます。米国などの欧米圏をはじめ、日本での就業を考える学生の人気が高いです。
なぜ韓国人は世界で戦えるのか?その4つの理由
<1>教育とグローバルな視野
韓国では、幼少期から英語や中国語の学習を始める早期外国語教育に注力しています。
首都ソウルでは公立の一部の小学校で、1年生から英語が正規科目として週3コマ設けられています。さらに中学校、高校に進んでも英語教育は強化され、SELHi(ソウル英語特別化高校)などの英語特化校が設置されています。大学でも、ほとんどが必修の英語講座を設けるほか、海外インターンシッププログラムや留学制度も充実しています。こうした取り組みにより、韓国の学生は自然と国際的な視野を身につけることができ、教育を通じてグローバル人材が継続的に育成されています。
<2>移民数が影響力に比例する?
海外に220万人以上の在外同胞が住む韓国は、移民による国際的なネットワークが発達しています。特にアメリカには約200万人の韓国系移民が居住しており、現地で多方面で活躍する韓国系アメリカ人コミュニティが形成されているそうです。
一方、日本の場合はアメリカに約45万人の移民がいるに過ぎず、韓国人移民の4分の1程度の規模です。韓国企業の海外事業拠点が各地に広がり、国際的プレゼンスが高まっている背景には、このようなネットワーク力が大きく影響していると言えるでしょう。
<3>シリコンバレーに集まる韓国スタートアップ起業
近年、韓国発のスタートアップ企業が海外、特にシリコンバレーに進出するケースが目立ちます。調査によると、海外に進出した韓国スタートアップの半数以上が、韓国に親会社を置かない「ボーン・グローバル」企業であることが分かりました。創業時から海外市場をターゲットに据えた真のグローバル企業が増えているのです。
※ボーン・グローバル企業(以下BG企業)とは、創業時と同時、または2、3年以内などの早期に国際事業を開始したベンチャーや中小企業を指す。 特に海外での売り上げが25%以上ある企業を言うことが多い。 将来的な内需縮小が確実な日本で、これからの時代はベンチャー、中小企業もさらなる海外進出が求められる。
また、別の調査では、海外進出を目標に創業した韓国ベンチャー企業10社のうち、実に5社が創業5年以内に海外進出に成功しているとの結果が出ています。スピード感のある海外展開が実現できている一因として、シリコンバレーを中心とした現地コミュニティの支援体制の充実が挙げられます。
このように、韓国人起業家やエンジニアは、世界的スタートアップ拠点であるシリコンバレーで存在感を高め、資金調達や人材確保、コミュニティ形成などで成果を上げつつあります。
<4>政府の支援と産業戦略
韓国政府は、経済のグローバル化に合わせ、世界で活躍できる人材育成に注力してきました。留学支援、海外インターンシッププログラム、語学研修制度など、さまざまな施策を打ち出しています。
また、主力産業の海外ビジネス支援や、現地でのスタートアップ支援センター設置なども行われています。2023年2月には、UAE・アブダビに「韓国スタートアップ支援センター」が開設されました。中東市場での韓国スタートアップの販路開拓を政府が後押しする狙いがあります。
さらに韓国は、先進国ではじめてスタートアップビザ制度を導入しました。2022年11月から、ベンチャー企業家らにビザを発給し、国内での起業活動を支援しています。こうした政府の取り組みもあり、韓国では近年、企業価値10億ドル以上の「ユニコーン」と呼ばれるスタートアップ企業が続々と生まれています。(詳しくは、なぜ日本に?韓国スタートアップ企業の成長 – 韓国人採用ナビにて記載しています。)
このように、政府による人材育成と企業の海外展開支援が、韓国の次世代を担うスタートアップ企業の成長を下支えし、韓国人の世界での活躍を後押ししていることが伺えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
音楽やコンテンツなどの韓国カルチャーの世界的人気に対する記事は多くありますが、今回は、その源泉となる「韓国人材」が世界で活躍できる理由について掘り下げる記事の作成に至りました。
日本においても、グローバル人材の獲得競争が一層激化する中、日本国内の人手不足に対する新たな視点が求められています。韓国人材の魅力が形成される理由を知っていただける機会になると幸いです。
参考文献
「海外出稼ぎで給料2倍」成功談の裏で“未払い”過酷労働も 「若者の日本離れ」現実は
日本人の若者が海外に出稼ぎへ 増加の裏側にある労働問題 – 貧困や格差のない社会へ – NHK みんなでプラス
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ウォール街とシリコンバレーの韓国人たちが米国での起業を支援 | 東亜日報
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