韓国には、弁護士や医師といった国家資格から民間のものまで、2万件以上の資格が存在しています。就活生にとっても、資格取得は日本以上に重要視されています。激しい就職競争に勝ち抜くため、大学卒業前から勉強を開始し、卒業後の就職準備期間にかけて資格取得を目指すケースがよく見られるそう。特に公務員や大手企業に就職するためには、留学経験や資格といったスペックを積み上げることが重要とのこと。大学卒業後すぐに就職できない若者が多い背景の一つとも言えます。
この記事では、韓国で人気の資格をまとめています。日本就職を目指す韓国人が所持している資格は実際にどのようなものなのか、見ていきましょう。
就職に有利とされる資格
韓国史能力検定試験
韓国史の知識を証明する資格です。教員、消防、警察を含む国家公務員試験・公共団体採用試験の出願には、1~3級の所持が要求される場合もあります。国費留学生の選抜にも用いられています。
貿易英語
貿易関連の英文書類の作成や翻訳といった英語力のみならず、貿易の実務知識まで問われる国家資格です。 1級では、4年制大学の経済系学部卒業者や大企業の貿易実務管理責任者が身につけるべき貿易実務全般に関する知識が要求されます。2級は専門大学および経常系学部の在学生レベル、3級は商業高校程度の基本知識レベルです。韓国国内では、採用・昇進などで優遇されています。
商工会議所漢字試験
1級から9級まであるレベルのうち、1~3級が国家資格と位置付けられています。1970年代のハングル専用政策を契機に韓国国内では日常的に使われる漢字やその機会は限定されるようになっており、漢字に苦手意識を覚える若者が増えています。そんな中、近年では韓国では中華圏や日本といった漢字文化圏国家との輸出や投資が増加していることから、企業業務や日常生活に必要な漢字の理解や駆使能力を評価する資格です。
カラーリスト産業技師
カラーリスト産業技師は色彩に対する専門家として色彩関連商品企画、消費者調査、色彩規定、色彩デザイン、色彩管理といった色彩全般にわたる専門的な知識と技術を認定する資格です。主に製品に対する色彩演出を通じて、製品の付加価値を高めることができます。民間のみならず、警察公務員任用令、公務員手当てなどに関する規定、勤労者職業能力開発法施行令などの法令上の優待を受けることができるため、人気を集めています。
産業安全技師
産業現場で起こりうる安全問題に特化した技師資格です。近年、製造業や危険物を扱う産業現場での安全に対する重要性が浮き彫りになったことから、労働者が安心して生産性向上に注力できる作業環境を作るための専門的な知識を持った技術人材を養成するために制定されました。若年層が取得する資格の中でも上位の人気があり、特に工学系の大学生が取得する傾向があります。機械、電気、化学、建設など6科目の筆記試験と実技が課せられます。「産業暗記士」という別名があるほど暗記量が多いことでも有名です。
公認仲介士
宅建の韓国版で、不動産取引に必須となる国家資格です。大学生が夏休みなどのまとまった時間に勉強する資格の一つとして人気を集めています。特にソウルでは住宅価格の上昇が近年著しく、高騰する仲介手数料に魅力を感じる学生が多いようです。しかし、人気の高まりに伴って資格取得の難易度も上がり、仮に取得できたとしても韓国国内で不動産関連業界への就職に直結するとは限らなくなってきているようです。
IT系就職に必要とされる資格
韓国では日本に比べてIT業界に大手企業が集中していることもあり、IT系の資格も人気を集めています。
情報処理技師(情報技師)
韓国産業人力公団が認定する資格の一つです。コンピュータープログラミング、ネットワーク、データベース、ソフトウェア開発など、IT分野での専門技術を証明します。
情報処理産業技師 (ITQ)
韓国産業人力公団が認定する、IT分野で特に重要な資格です。コンピュータプログラミング、ネットワーク、システム管理などに関する基本知識が問われ、情報技術の活用能力や情報技術管理、実務能力水準を証明します。先に述べた情報処理技師または情報処理産業技師の資格を所持していれば、学歴や職歴の要件を満たしていない場合でも日本の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザ)を取得できます。韓国人のITエンジニアを募集する場合には優遇条件となるでしょう。
MOS
MOS(Microsoft Office Specialist)はマイクロソフト社が直接認定する国際資格試験で、日本でも一般的な資格です。 試験科目にはパワーポイント、ワード、エクセル、アクセス科目があります。韓国では、学校や教育機関でMOS資格課程を提供しているほどの定番資格です。
コンピュータリテラシー
大韓商工会議所が運営するコンピュータ活用能力資格証は、コンピュータ、スプレッドシート、データベース活用能力を評価する国家資格です。 受験資格に制限はありませんが、筆記と実技があり、2級以上でないと国家資格とは認定されません。
GTQフォトショップ
GTQフォトショップ資格証は国家公認のグラフィック技術資格で、コンピューターグラフィックデザイン能力を認定するものです。写真や各種イメージ編集、ウェブデザインなどデザインにおける基礎的な知識を組み合わせて、フォトショップなどのデザインプログラムを活用する力を問います。デザイン資格の中で最も多くの人が受験する資格として知られています。
韓国独自のユニークな資格
韓国の就活生に人気を集める資格は、日本と共通するスキルを認定するものが多数を占めています。その一方で、韓国ならではの意外な資格も若者に人気です。
韓食調理技能士
韓国の伝統料理を専門的に作る技術を証明する調理師資格で、誰でも受験できます。試験科目には筆記と実技があり、実技は日常的に料理をしていないと合格が厳しいと言われています。
単に調理の実力を評価するのではなく、調理施設や器具の衛生管理、材料の購入、栄養学、関連法規などを評価します。一般には主婦や調理関係職種を志望する人が受験する資格ですが、兵役前の10~20代男性にも人気があります。他に比べて負担が少ない調理兵に志願できるためです。
フォークリフト運転技能士
韓食調理技能士と同様、兵役時に優遇を受けるために取得する男性が多い技能士資格です。月8回も受験機会があり、再挑戦のしやすさと難易度の低さが人気の理由で、軍事車両の運転にも優位になります。兵役を控えた男性には、他にも洋食調理技能士、掘削機運転技能士といった資格も人気があるようです。
まとめ
この記事では、日本就職を目指す韓国人材が履歴書に書く可能性が高い資格をまとめました。ご紹介した資格の中には、資格自体が評価できるものもあれば、取得への努力や取得理由が評価できる資格もあります。韓国人採用の参考になれば幸いです。
<参考文献>
국가기술자격 목록 – 국가자격 종목별 상세정보 | Q-net
韓国・昨年の国家技術資格、半数近くが「19~34歳青年」…「就職目的」
https://www.cctvnews.co.kr/news/articleView.html?idxno=24074