韓国の大学生の約38%が利用!韓国の就活塾とは?

韓国が過酷な学歴社会であるということはよく知られた事実です。しかし、苦労して名門大学に入学した先には、また限りある大手企業に就職するための競争が待っています。そんなシビアな就職活動を成功させるため、韓国では「就活塾」という選択肢があり、日本よりもはるかに一般的なようです。今回は、就活塾にはどんな学生が主に通っているのか、どんな指導が行われているのか、その実態を調べてみました。

韓国における塾文化とは

韓国の大学生の約38%が利用!韓国の就活塾とは?

昨年度、全国の小中高校約3000校に在学中の児童・生徒約7万4000人を対象に国が行った調査では、1人当たりの私教育費は月平均41万ウォン(日本円で約4.5万円)でこれは前年から11.8%増加となっており、私教育を受ける児童・生徒は全体の78.3%と韓国はまさに塾大国だということが分かります。

学習塾のみならず、音楽塾、漢字塾、TOEIC塾など、「塾」がカバーする領域は多岐にわたっていますが、就活の領域でもまた存在感を放っているようです。公務員塾、CA塾という特殊な職業を目指す塾は日本でもよく見られますが、韓国には特定の民間企業を目標とする就活塾まであるそうです。

ソウル聯合ニュースから2019年度の4年制大学に通う3,4年生1080人を対象にしたアンケート結果を見ると、韓国の大学生の約38%が就職活動を支援する就活塾に通った経験があり、その支出は平均205万ウォン(日本円で約23万円)であることが分かっています。利用した人の割合は2016年度の調査(18.2%)の2倍以上に拡大しています。

専攻別に見てみると、経営・商学系の学生が47.4%と最も高く、受講する科目(複数回答)は「専攻分野の資格獲得に向けた教育」が49.4%で最多でした。

同アンケートで、逆に就活塾を利用しない理由について聞くと、「経済的な余裕がない」が最も高く64.5%で、次に「効果を確信できない」33.3%と続きました。

韓国では文理間の雇用格差が拡大中!?

中央日報2022年1月の記事によると、コロナ禍で求人数が減る中でも理系人材の採用数は増えているとのこと。これは、オンラインでの活動が活発化したことや、企業のデジタル化加速のためにITの重要性が高まったためで、社会全体としては就職難が続きながら、文理間の雇用格差がますます広がるという現象が起きているようです。

そのためデジタル領域を扱えるだけのスペックを身に着けようと考える文系学生も多く、IT資格証やコーディングを教える塾も存在しています。しかしながら現実は、塾の授業料は大学と同じくらいで、金銭的・時間的に膨大なコストをはらわなければなりません。また、「国費支援教育や就職連携プログラムにはIT・プログラミングなど理工系職務が多く、文系職務に合う経歴を積む機会も少ない」という声があるように、文系の特性を活かしてスペックを積む機会も充実していないという問題点があるようです。

企業ごとの対策が行われる

中央日報の取材に対して、高麗大学4年生のキムさんが就活塾の内情について語りました。週に2回ずつ、午前9時から午後9時まで終日授業を受ける総合コースでは、月に54ウォンの費用がかかるといいます。韓国では大学4年生の2月から就職活動が始まるため、冬休み期間を活用して塾に通う大学生が多く、各塾で15クラスほどの総合コースが運営されます。総合コースの受講料は月25ー100万ウォンで、大学4年生や就職浪人がほとんどですが3年生も1割ほどいるなど、就職も他の人たちより先に準備する傾向に変わっているといいます。

講師は、主に大企業の人事出身者であり、自己紹介書と適性検査や面接まで総合的に指導します。学生の経験に基づき、企業に合わせた「人生ストーリー」の添削や、面接の講義では自然な表情と話法、適切な言葉使いなどを教えたりします。会社と職務別にどのような服装をするべきかというアドバイスまで聞くことができ、入社に必要な全ての過程をカバーしていると言えるでしょう。

本格的な就活シーズンが始まる3月には、超大手企業向けに特化した講義が開かれます。実際にその企業で講義した経験がある講師が、企業の資料や性格評価ガイドを提供しています。その中には企業の歴史はもちろん、系列会社別の講義も含まれています。

このように、就活塾は充実したプログラムを提供しているようです。塾の実際の有用性については意見が分かれ、一定の効果があったとする意見もある一方で、「就職が厳しいとはいえ塾まで通うべきかは疑問」「塾に通った友人の大半は特に役に立っていないと話している」といった意見もあります。

就活生を惑わす商法も

今や韓国においては巨大ビジネスとなった就活塾ですが、一部の塾では、就活生本位の経営ではなく「特定企業の採用代行を担当している」という言葉で就活生を惑わすことがあるようです。朝鮮エデュの取材によると、学院が広報で掲げる「採用代行」「推薦採用」や、「特定大企業出身専門家指導」などは必ずしも事実ではないということです。実際、企業の人事側の話と就職塾の言い分が食い違っているケースも明らかになりました。「大手企業出身の講師」とうたいながら人事部の経験がなく、実際の選考での判断要素と塾での指導が合っているか内実が分からないというような点も指摘されています。2017年には一部の学院が採用約束を守らず、受講生たちに告訴される事件も発生しました。このように、信頼できる就活塾を選ぶにも、就活生の負担は小さくありません。

まとめ

いかがでしたか?韓国における私費教育の普及率の高さや、現在求められる人材のトレンドに変化が起こっていることに触れました。就活塾は、企業ごとに特化したコースが用意されている点や、全ての過程を包括して対策を受けることができる点で、就活を有利に進める手段になっているようです。一方で、塾選びの際には、理想的なうたい文句に就活生が騙されてしまうというリスクもあるということでした。このような韓国人大学生を取り巻く社会事情をこれからもご紹介していきます!

(参考文献)

https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230307002900882

https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190517000900882

https://www.joongang.co.kr/article/25038075#home

https://s.japanese.joins.com/JArticle/223820?sectcode=300&servcode=300

https://edu.chosun.com/m/edu_article.html?contid=2018011201149

https://www.creatrip.com/ja/blog/9064