韓国の都市青年団派遣制が充実 地方移住への意識

近頃、韓国では都市部から地方に移住する若者が現れ始めているといいます。ソウル一極集中が知られている韓国ですが、なぜ若者の地方移住が増えているのでしょうか。この記事では、実際に韓国で行われている青年プログラムや、そのプログラムをきっかけに地方で起業した若者の例を挙げてみようと思います。

なぜ地方へ?若者地方移住が進む背景

若者が都市部から地方へ移住をする理由としてさまざまな背景が考えられますが、ここでは考えられる背景の一部を挙げていきたいと思います。

ー背景①若者の意識変化

韓国では長年、「ソウルでいい大学、いい企業に入り、お金を稼いでこそ人生の成功だ」という考えが強かったと思われますが、その価値観に疑問を持つ若者が増えたと考えられます。東京新聞2024年1月の記事によると「こういった考えは親のガスライティング(誤った情報を植え付けて心理的に操ること)だ」と話す若者もいるようです。ソウル一極集中・地方の過疎化、都市部で競争する人生への疲れ、またそれが要因のひとつとなって起きる少子化などの状況が相まって、若者の意識変化が起きているのかもしれません。

また、ライフスタイルを変えたいという欲求や、デジタル環境に慣れているMZ世代を中心にリモートワーク、ワーケーションなど働き方が変化したことも、若者の意識変化を起こした要因の一つだと考えられます。

ー背景②国をあげての地域活性化プログラムの実施

現在韓国では、さまざまな地域で国や地方自治体による地域活性化プログラムが実施されています。2011年からの10年間、全国の青年人口は毎年2%水準の減少率を示し、特に人口50万人未満の地方中小都市での減少率は首都圏や大都市に比べて2倍以上高いそうです。そのようなことから、人口流失が進む地方都市では、地域の核心的な人的資本である青年祖人口を確保するための政策作りに力を入れているそうです。

(左:年齢別人口増加率の変化    右:地域別人口移動状況)https://www.auri.re.kr/boardAttachPreview.es?bid=ATT&list_no=4308&seq=5

都市青年団派遣制とは?

前途した国や地方自治体による地域活性化プログラムのうちの一つが「都市青年団派遣制」です。日本の地域おこし協力隊からヒントを得たもので、2018年に韓国南東部の広域自治体である慶向北道が開始しました。

ー概要

都市部に居住する青年が農村部に居住し、地域コミュニティの一員として暮らしつつ、将来的に農村部で会社を起こすことにより、農村の地域コミュニティを活性化させる一助とするもの

ー内容

農村部への移住後、2年間の活動期間を経て起業することが条件。起業計画書の提出者には、活動内容によるものの2年間に渡って月額 300万ウ ォン(約30万円)程度の生活資金や総額3000万ウォン(約300万円)の起業資金が給付される。

ー日本の地域おこし協力隊と違う点

日本の地域おこし協力隊が基本的に市町村と委嘱関係を結び、会計年度任用職員として給与を受けとるの に対し、韓国の都市青年田舎派遣制は起業資金の給付を受ける。起業準備者という色が強いのが特徴。起業支援の性格を強く帯びるようになった背景には、韓国都市部における若者の就職難が挙げられます。就職難の若者の就労を支援する一環として、将来性が見込まれる起業家に対し、その資金の一部ないし全部を助成する取り組みをあげてきたといいます。

実際に移住〜起業した具体例

束草のソーホー259 ゲストハウス周辺には、関連する建物も多い(http://soho259.co.kr/?ckattempt=1)

江陵市 コワーキングスペース、ゲストハウス等

江陵地域は青年の流出が続き、青年人口比率が全国で2番目に低い水準とされている自治体です。そんな江陵市で、江陵地域の代表的な青年ローカルクリエイターとして、「ザ・ウェーブカンパニー」というコワーキングスペースの運営・並びにギャラリー招集を運営している若者がいます。また、束草の「ソーホー259」というゲストハウスを運営したり、旅行者コンシェルジュ運営などを行っている若者もいるそうです。旧都心内の空き家や空き店舗をリモデリングして個性ある創業空間を造成したり、地域の若者や住民たちと共にできるプログラムを運営し、移住してきた青年たちが、地域活力向上に寄与しているようです。

高霊郡 カフェ開業

高霊郡は、2021年時点で人口3万人あまりの市町村です。農業以外の産業が育っていないという問題点を抱えていました。2018年、都市青年団派遣制の公募で審査を通過した青年らが、2021年10月に高霊郡にてカフェ‘H-Table’ を創業しました。

提供する飲食物の原材料に有機農産物を活用するほか、カフェに来店する既存住民同士の交流に加え、店舗を運営する他地域出身の青年たちと地元住民との間の交流も発展することが期待されています。また、行政も、開店後も継続的に支援していく意向を表明しているようです。

まとめ

いかがでしたか。韓国の若者が、自分らしいライフスタイルや働き方を求めて、ソウルのみならず地方でも活躍していることがお分かりいただけたと思います。

韓国に限らず、日本の地方企業へのニーズの高まり、マッチングのチャンスも増しているかもしれません。この記事が採用のお役に立てれば幸いです。

【参考文献】

「青年村」プログラムをきっかけに地方に外部からの若者が定住=韓国 | wowKorea(ワウコリア)

「人生を変える1週間〜韓国・大丈夫村〜」 – Asia Insight – NHK

韓国の若者が「脱ソウル」し始めた 「大都市偏重は親のガスライティングだった」 地方で農業「ソウルよりずっと豊か」

日本を参考にしながら進む韓国の地方創生。消滅可能性都市・密陽(ミリャン)の挑戦

韓国の都市青年田舎派遣制