韓国は、eスポーツの世界において一大勢力を誇る国として知られています。90年代後半から急速に発展し、今では数々のプロゲーマーを輩出し、多くの人々がeスポーツに熱狂しています。この記事では、韓国eスポーツの歴史やプロゲーマーの実態、ゲーム会社への関心や就職率、そして今後の市場展望について詳しく探ります。韓国がどのようにしてeスポーツ先進国となったのか、その背景や展望を見ていきましょう。
韓国eスポーツの歴史
韓国がeスポーツ大国となった背景には、独特な歴史と文化の変遷があります。その理由を紐解くために、韓国のeスポーツの歴史を振り返ってみましょう。
韓国のゲーム市場は1990年代半ばまでは、日本から輸入された家庭用コンソールゲームが主流でした。しかし、1980年代後半から政府が全国の学校でパソコン教育を実施したことで、若い世代のPCリテラシーが向上しました。さらに1990年代半ばから家庭用PCの普及が進み、インターネット接続が可能となると、PCゲームが急速に浸透していきました。
この流れを決定づけたのが、1998年に発売されたブリザード社の人気リアルタイムストラテジー(RTS)ゲーム「スタークラフト」の大ヒットでした。このゲームは、リアルタイムで戦略を競う要素から、全国的にゲームプレイヤーのコミュニティを形成し、PCゲームの普及を一気に加速させました。また、PCを所有していない層にもゲームプレイの場を提供するために、ゲーム専用の施設「PCバン」が全国各地に次々と開店しました。PCバン内で「スタークラフト」のトーナメント大会が開催されるようになり、これがeスポーツの始まりとなりました。
こうした政策的背景やヒットタイトルの影響で、韓国では家庭用コンソールゲームよりもPCゲーム、特にオンラインゲームの文化が主流となり、eスポーツ振興の基盤が築かれました。eスポーツの市場規模シェアでは、北アメリカがリードしており、中国や韓国がそれに続いています。ドイツの調査会社Statistaによると、2019年の世界中のeスポーツ市場規模は約9億5750万ドル(約1053億円)で、日本はそのうちの約6%程度のシェアしかありません。
今や、韓国はeスポーツ先進国に成長しました。韓国政府はeスポーツを公式スポーツとして認め、eスポーツの発展を支援する政策を打ち出しています。例えば、韓国eスポーツ協会(KeSPA)は2000年に設立され、eスポーツイベントの開催やプロリーグの運営をサポートしています。
プロゲーマー(eスポーツ選手)について
韓国で最も高額な年俸を得ているスポーツ選手は一体誰でしょうか。韓国プロ野球の最高年俸は約2億円(20億ウォン)、サッカー(Kリーグ)の最高年俸は約1億5000万円(約15億ウォン)ですが、そのどちらでもありません。実は、それら既存のスポーツ選手を大きく上回る5億円~10億円(推定)の高給与を得ているのが、eスポーツ選手なのです!
中でも、有名eスポーツ選手である「Faker(フェイカー)」は、中国から24億5千万円(245億ウォン)のオファーを過去に受けたというエピソードも話題になりました。
世界のトップスポーツ選手の年俸と比べると金額はやや小さいものの、日本のトッププロゲーマーの最高年俸が約1億円程度であることを考えると、韓国のトッププロゲーマーの地位と処遇がいかに特別視されているかが分かります。
彼らは単なるゲームの達人を超え、スポーツ選手同様、あるいはそれ以上の社会的地位を獲得しているようです。
そうした高い地位を手にするためには、韓国のeスポーツ選手は厳しい環境の中で鍛え上げられます。優れたゲームスキルはもちろん、戦略的思考力、チームワーク、強い精神力も必須とされ、プロの座を勝ち取るまでに過酷なトレーニングと競争を経なければなりません。このようにハイレベルな総合力を兼ね備えたことで、韓国プロゲーマーは世界中から高く評価されているのです。
ゲーム会社への関心やキャリア
このようにeスポーツビジネスが発展を遂げる韓国では、ゲーム会社への関心と人気も自然と高まってきました。大手製造業やITベンチャーと比べると知名度は劣りますが、ゲーム会社は処遇面で魅力的な業界となっています。給与水準が高いことに加え、福利厚生も手厚く、就職を希望する学生からの人気は非常に高くなっています。
実際に、KOREC登録者の学生の間でもゲーム会社への人気は高いです。
KORECを通じて日本就職を経験した学生からは、「韓国のゲームは開発時間が短くバージョンアップが激しい。一方で日本のゲームは最初からよく作られているから、バージョンアップや課金をしなくても楽しめるものが多い。」という声がありました。
このように、日本のゲーム企業に興味をもち就職を目指す学生も多いようです。
また、中高生の間で行われた「将来の夢」調査では、ソフトウェア開発者がトップ入りするなど、ITやゲーム産業への高い志向がうかがえます。ゲームを趣味とするだけでなく、キャリアとして目指す若者も少なくありません。
eスポーツ市場の展望
世界のeスポーツ市場は年々拡大を続けており、2019年の市場規模は約1053億円と推計されています。主要市場である北米、中国に次いで、韓国もトップの地位を占めています。こうした市場の成長に伴い、韓国では人材需要が高まっているのが現状です。
プレーヤーだけでなく、マーケティング、財務、セールス、事業開発、コンテンツ制作など、実務スタッフの需要も急速に高まっています。eスポーツ界隈では、各プロチームや球団が選手やコーチ陣だけでなく、こうした運営スタッフの確保に力を入れる動きが活発化しています。
一方で、eスポーツ産業が持続的に成長していくためには、選手やスタッフの人材確保が欠かせません。現役選手の引退後の進路支援に加え、将来eスポーツ界で活躍したい青少年に向けた専門教育機関の設立が重要視されているのです。
さらに韓国政府や企業は、地域活性化やインバウンド観光振興の手段としても、eスポーツに注目しています。国際大会の誘致や関連施設の整備を進めることで、地域経済の活性化と新たな雇用創出が期待されているようです。
まとめ
いかがでしたか。韓国のeスポーツ市場は、政府の支援や社会的な支持を背景に、急速に成長しています。プロゲーマーの高い年俸やゲーム会社への関心の高さは、eスポーツがただの娯楽を超えた重要な産業となっている証拠です。今後もeスポーツの発展が続くことが期待されており、関連する新たなビジネスや雇用の創出が見込まれます。韓国のeスポーツ市場は、世界のeスポーツ業界においても引き続き重要な役割を果たすことでしょう。
参考文献
新規参入続出! eスポーツビジネスの動向や事例を紹介 – ゲームコラム
世界のeスポーツ:韓国はなぜ「eスポーツビジネスの発祥地」なのか – KPMGジャパン
eスポーツ市場が3兆ウォン規模に拡大…政府の支援なしでは成長は困難
韓国がeスポーツ大国になった経緯とは? – GIGAZINE