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CDが売れる韓国の秘密を解剖!K-POP独自の「アルバム」とサステナブルへの転換から学ぶマーケティング戦略

2026.06.03 調査メンバー: イム・ギュヒョン

韓国の若者文化やトレンドを最速でキャッチアップし、現地の生きた情報を発信している「韓国ワカモノLabo.」です。

世界的に音楽のデジタルストリーミング化が進む中、韓国のK-POP市場では今なお「CD(フィジカルアルバム)」が驚異的な売り上げを記録し続けています。日本のマーケティング担当者様の中には、「なぜデジタル時代に実物のアルバムがこれほど売れるのか」と不思議に思われる方も多いのではないでしょうか。

韓国のMZ世代やファンダムにとって、アルバムはもはや「音楽を聴くための道具」ではありません。そこには、緻密に計算された仕掛けと、近年急速に変化している新しい消費価値観が存在します。今回は、現地ファンのリアルな動向から、韓国市場を攻略するための購買心理と最新トレンドを徹底解説します!

K-POPアルバムが爆発的に売れる「3つの購買目的」

現代の韓国市場において、ファンがアルバムを購入する動機は明確に3つに集約されます。

  • フォトカード(トレカ)の収集:実物資産としてのコレクション欲を満たすため。
  • ファンサイン会(対面・映像通話)の応募券獲得:アーティストとの直接的なプレミアム体験を得るため。
  • アルバム販売量(初動)への貢献:推しグループの社会的地位や実績を支えるという「ファンダム間の競争心理」。

企業が韓国でプロダクトを展開する際も、この「コレクション欲」「体験価値」「応援・競争心理」の3軸をどのように刺激するかが重要な鍵となります。

ファンを熱狂させる「ガチャ(Gacha)システム」の進化

アルバムの複数枚購入を促す中心的な仕組みが、ゲームのランダム要素を取り入れた「ガチャシステム」です。その手法は年々高度化しています。

1. バージョンの細分化とランダム商法

多人数のグループ特性を活かし、メンバーごとに異なる仕様のアルバムを展開する手法です。例えばSEVENTEENが発売した5th Album『HAPPY BURSTDAY』のDAREDEVIL Ver.メンバー13人のビジュアルがそれぞれ表紙となったバージョンが用意されましたが、購入時は「ランダム発送」となる戦略が取られました。

ファンは欲しいメンバーのバージョンを当てるために複数枚購入するか、13枚セットの商品を購入します。その後、SNSや2次市場(タングンマーケットやボンゲジャtargetなどのフリマアプリ)で他のファンと交換・分配(분철=プンチョル)を行うのが現地の定番スタイルです。

2. 公式フォトカード(トレカ)の希少価値化

現在のアルバムの主役はCDではなくフォトカードです。コロナ禍でオフラインイベントが中断された時期、ファンはイベント費用をカード収集(通称:앨범깡 アルバムカン、드볼ドボール(ドラゴンボール)=全種類集めること)に投じるようになりました。

過去にNCTが発売した『RESONANCE Pt.1』では、23人のメンバーからランダムでカードが封入されただけでなく、世界に各500場(計11,500枚)しかない「超限定スペシャルカード」をランダム挿入し、射幸心を強く刺激しました。「世界に数枚しかない」というプレミアム感は、消費者の購買行動を急加速させます。

3. 流通先(販売店)別限定特典「미공포(ミゴンポ)」

芸能事務所が封入する基本特典に加え、アルバムを販売する外部の流通会社(サウンドウェーブ、メイクスター、アップルミュージック、Ktown4uなど)が独自の購入特典を付ける手法です。

予約期間中に特定のショップで購入すると、そのショップでしか手に入らない「未公開フォトカード(미공포=ミゴンポ)」がランダムで付与されます。例えばaespaの2nd Album『LEMONADE』でも販売店別の独占特典イベントが実施され、ファンは同じアルバムを異なるショップで何回も買い直すことになります。

二次流通のペインポイントを解決した専用プラットフォーム「포카마켓(ポカマーケット)」

こうしたフォトカードの過熱に伴い、個人間取引(Xやフリマアプリ)の不便さを解消するリセールプラットフォーム「포카마켓(ポカマーケット)」が登場し、Z世代の間で主流となっています。

ポカマーケットが解決した3つの課題:

  • 詐欺の撲滅:個人間ではなくプラットフォームが仲介するため、取引の安全性が担保される。
  • 取引疲労の軽減:相場チャートで適正価格が可視化され、検索や価格交渉の手間が省ける。
  • 状態(傷)の検品:専門家による「검수(検品)サービス」を提供し、トラブルを防止。

マーケターへのインサイト

独自のランダム商法が加熱すると、必ず「交換・転売」の二次市場が生まれます。そこでの消費者トラブル(詐欺や状態悪化)を先回りして解決する「仲介プラットフォーム」のビジネスモデルは、現在の韓国MZ世代の消費環境において非常に高い支持を得ています。

経済を動かす「チケット」と「人気指標」としてのアルバム

1. ファンサイン会(対面・ヨントン)によるロングテール効果

アルバム1枚につき1回応募できるファンサイン会は、日本のAKB48グループの握手会に近いビジネスモデルです。当選確率を上げるために数百枚単位で購入するファンが多く、実質的な「購入枚数順の当選( 줄세우기=並べ替え)」が公然の秘密となっています。

特にコロナ以降に定着した「映像通話ファンサイン会(ヨントン)」は、現地の専門翻訳家を介することで海外ファンの大量購入を呼び込みました。音楽番組でのプロモーション活動が2〜3週間で終わった後も、サイン会を数ヶ月にわたり何度も開催(1次、2次…n次)することで、アルバムを長期的に売り続ける「ロングテールマーケティング」の中核となっています。

2. 「초동(初動)」と中国「Bar」の共同購入

発売後1週間(7日間)の販売量を指す「초동(初動)」は、한터차트(HANTEO CHART)の数値を基準とし、グループの人気やファンダムの規模を証明する最も重要なPR指標です。

出典: 

この数値を引き上げる原動力が、国内外のファンによる共同購入(공구=コング)です。特に中国の巨大ファンクラブ(通称:Bar)は、専用の割引リンクを通じて一回で数十億ウォン規模の決済を行います。メンバー別の購入数が透明に公開されるため、「推しの実績作りのために負けられない」という競争心理が働き、消費がさらに爆発します。

過剰消費の限界と「サステナブル×実用性」への大転換

しかし、こうした「重複購入を誘導する戦略」は、現在大きな社会的・倫理的課題に直面しています。

2026年2月には、大手芸能事務所HYBEと傘下レーベル前代表との訴訟判決において、販売代理店に一時的に在庫を抱えさせて見かけの販売数を引き上げる「音盤押し出し(밀어내기=ミロネギ)」の慣行が司法の場で事実上認定され、業界内外に波紋を広げました。また、渋谷の路上に特典だけを抜かれたSEVENTEENのアルバムが大量廃棄された事例などは、環境破壊として強い批判の対象となっています。

これに対し、環境団体「Kpop4planet」による『プラスチックアルバムの罪悪』キャンペーン(過剰生産の抑制や廃棄物削減の請願)などが活発化しており、エンターテインメント業界は今、「エコ・デジタル・実用性」を兼ね備えた新しいアルバムの形を模索しています。日本企業が韓国市場で参考にすべき、最新の改善事例をご紹介します。

① デジタル技術との融合:スマートアルバム

BOYNEXTDOOR <5th EP [The Action] (Weverse Albums ver.)>

  • Weverse Albums(ウィバースアルバム):実物のCDや厚いフォトブックを廃止し、QRコードが記載された薄い紙パッケージのみを提供。専用アプリでQRをスキャンすると、高画質のデジタルフォトブックや音源がユーザーアカウントに保存される仕組み。

Kep1er <7th Mini Album [BUBBLE GUM] (KiT ver.)>

KiTplayer

  • KiT Album(キットアルバム):超小型のプラスチックチップ機器をスマホに密着させ、暗号化された超音波を通じて専用アプリと同期する方式。フォトカードなどファンが本当に手元に残したい最小限のグッズだけを実物化し、環境負荷を低減しています。

② 開発段階からの環境配慮:親環境素材の導入

NCT DREAM <The 2nd Album Repackage – Beatbox (Photobook Ver.)>

NCT DREAMのアルバム『Beatbox』などのように、国際森林管理協議会(FSC)の認証を受けた用紙や、自然分解される大豆油インク、環境に優しいUVコーティングを採用するケースが増加しています。

③ 音楽が組み込まれた「実用品」への進化

「どうせ中身が廃棄されるなら、日常で使えるアイテムそのものをアルバムにしよう」という逆転の発想から生まれた成功事例です。

NCT WISH < Single Album [WISH] (WICHU Ver.)(SMART ALBUM)>

 <NewJeans 1st EP ‘New Jeans’ Bag [(Black) ver. 限定版]

aespa <The 1st Album [Armageddon] (CDP Ver.)>

アーティスト / アルバム商品のアプローチと特徴マーケティング効果
NCT WISH
『WISH』(WICHU Ver.)
公式キャラクター「WICHU」のぬいぐるみキーリングの内部にNFCチップを埋め込み、スマホをかざすと音源が聴ける仕様。Z世代の間での「バッグにぬいぐるみを付けるキーリングトレンド」に便乗し、ファン以外からも大ヒットを記録。
NewJeans
『New Jeans』(Bag Ver.)
アルバムのパッケージ自体をレトロな円形クロスバッグとして設計。「デザイン性の高いファッションアイテム」として機能させ、ファン以外の一般層の購買需要も創出。
aespa
『Armageddon』(CDP Ver.)
実際のCDが再生できるポータブルCDプレーヤー(CDP)そのものをアルバムとして販売。14万5,000ウォンという高額にもかかわらず、Y2K(2000年代)のレトロ感とBluetooth接続などの実用性がウケて即完売・再販を記録。

まとめ:日本企業の担当者が実践すべきファンダム・マーケティングの要諦

韓国のK-POP市場におけるアルバム消費行動の変化は、これからの「ファンコミュニティを巻き込んだマーケティング」の未来像を示しています。

単に「流行っているから」「認知度が高いから」という理由だけでインフルエンサーやアーティストを起用し、過度なランダム特典で消費者に負担を強いる手法は、韓国市場でも急速に敬遠されつつあります。

今後の韓国市場攻略において実践すべきアプローチ:

  • 「ペインポイントの解決」を考慮したエコシステムの設計:ポカマーケットの事例のように、消費者が購入した後に発生する「交換」「流通」のストレスを軽減する仕組みをブランド側が提供すること。
  • 「所有する誇り」と「実用性」の担保:NewJeansやaespaのように、プロダクト自体がファッショントレンド(Y2Kやキーリング文化)に合致し、日常生活で使える実用性や高いデザイン性を持たせること。

韓国のZ世代は、自分たちの消費行動が社会(環境)に与える影響に敏感であると同時に、自らの感性や推し活の文脈に深く寄り添ってくれるプロダクトには、非常に強いロイヤルティ(エンゲージメント)と拡散力を見せます。この「熱量とサステナビリティのバランス」を捉えた、新しいマーケティング戦略をぜひ実践してみてください!

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