
韓国Z世代のリアルなカバンの中身。なぜ今、日本ブランドが選ばれるのか。
韓国市場でのマーケティングを担当されている皆さん、こんにちは。私たちはソウルを拠点に活動する「韓国ワカモノLabo.」です。
「韓国のコスメ市場は自国ブランドが強すぎて、日本ブランドが入り込む余地はない」
そう思っていませんか。確かに、オリーブヤング(OLIVE YOUNG)の棚はK-ビューティーで溢れています。しかし、私たちワカモノの本音を聞いてみると、実は多くの「日本ブランド」が生活の一部として深く根付いていることが分かってきました。
今回の座談会で、現地のワカモノ4名が「実際に愛用している日本製品」の名前を次々と挙げた際、そこには共通する「選ばれる理由」が隠されていました。
「圧倒的な「コスパ」と、代えの利かない「専門性」」
まず驚かされたのは、私たちが想像以上に「日本製品のコスパ」をシビアに見ていることです。
「名前の通り、本当に『パーフェクト』だと感じました」
「ソフティモは300円台なのに52枚も入っています。韓国ブランドのアリエルと比べてもコスパはかなりいいと思います」
洗顔料の「センカ(洗顔専科)」やクレンジングシートの「ソフティモ」といった定番品は、その圧倒的な容量と価格、そして肌への低刺激性が高く評価されています。一方で、価格が少し高くても「これじゃないとダメ」という専門的な信頼を得ている商品もあります。
「ビューラーは絶対に資生堂のビューラーです。韓国で買うと少し高いですが、今まで使った中で一番きれいにまつ毛が上がりました」
このように、「安くて良い」という日用品としての強みと、「高い技術力」という専門家としての強みが、韓国市場における日本ブランドの二大巨塔となっていることが分かります。
企業担当者向け:明日からの打ち手
「日本ブランド=高品質」という曖昧な訴求ではなく、具体的に「何回使えるか」「どれだけ落ちるか」という定量的コスパを可視化する。
ビューラーやアイブロウマスカラのような、技術的な差異が出やすい「道具・専門品」のカテゴリーで一点突破を狙う。
ランキング1位は「購入の決め手」にならない?変わりゆく信頼の形
「オリーブヤングでランキング1位を獲れば、勝手に売れる」という考え方は、今の韓国Z世代には通用しなくなっているかもしれません。
広告慣れしたワカモノが最後に信じるのは「X(旧Twitter)」と「知人」
座談会で「ランキングを信じるか」という質問を投げたところ、メンバーからは非常にシビアな回答が返ってきました。
「正直、あまり信じません。むしろ家族や周りの人が『いい』と言うものの方が信頼できます。広告っぽい感じがすると少し抵抗感があります」
「YouTuberも広告や協賛が多いことを知っているので…。むしろ友達のおすすめやX(Twitter)の口コミの方が信頼できる」
韓国のMZ世代は、幼い頃から高度にデジタル化された環境で育ち、マーケティングの手法を熟知しています。過度に演出されたYouTuberの動画や、不自然に上位へ押し上げられたランキングに対しては、むしろ警戒心を抱きます。今、最も信頼されているのは、加工されていない「生の声」が集まるSNS、特にX(Twitter)でのリアルな言及です。
1位という権威に「+αの条件」を求める合理的な消費行動
とはいえ、ランキングが無価値なわけではありません。それは「買う理由」ではなく「検討リストに入るための入場券」に変わっています。
「1位だと言われると、正直少し気になります。(中略)ただし、割引や1+1(ワンプラスワン)のような条件があると、より買いやすくなると思います」
1位という権威に加え、その瞬間に「お得であること」が証明されて初めて、私たちはレジに向かいます。韓国特有の「1+1」文化は、単なる安売りではなく、購入への最後の一押しとなる「心理的な安全装置」として機能しているのです。
企業担当者向け:明日からの打ち手
メガインフルエンサーによる一方的な宣伝よりも、X(Twitter)での自然なUGC(ユーザー生成コンテンツ)を誘発するギフティング施策を優先する。
ランキング実績をアピールする際は、必ず「今だけ割引」「1+1」などの即時的なメリットをセットで提示する。
韓国市場に足りないのは「香り」だった。ライフスタイルカテゴリーの勝機


座談会の中で、最も「熱量」が上がったトピックの一つが「香り」についてでした。これは日本企業のマーケターが最も注目すべき、未開拓のチャンスかもしれません。
金木犀、フローラル、日本の柔軟剤……「独自の香り」がリピートを生む
「私は香り系の商品をよく買います。理由は、日本の商品には韓国ではあまり見かけない香りが多いからです」
「ラボンのピンクのファブリックミストは本当にいい香り。もし韓国に入ってきたらすごく人気になると思います」
私たちが日本に旅行したり、Qoo10でわざわざ日本の製品を探したりする大きな理由は、韓国の製品にはない「日本の香り」にあります。金木犀(キンモクセイ)や、繊細なフローラル系の香りは、韓国のワカモノにとって「特別感」と「癒やし」を与える重要なファクターになっています。

このように、単なる「化粧品」としての機能だけでなく、生活空間全体を彩る「香り」を軸にしたライフスタイル提案には、まだ大きなホワイトスペースが残されています。
企業担当者向け:明日からの打ち手
「日本で今、最も売れている香り」をそのまま持ち込むのではなく、韓国の既存製品と比較して「どの香りが欠落しているか」を分析して投入する。
柔軟剤やファブリックミストなど、香りそのものが価値となるカテゴリーを、オリーブヤングのライフスタイル枠として提案する。

メンズビューティーとカラーコスメ。ビジュアルインパクトの差別化戦略
最後に、今後のトレンドを占う「メンズ市場」と「カラーコスメ」についても触れておきます。ここでも、日本ブランドには意外なポテンシャルがあることが見えてきました。
韓国コスメの「ナチュラル」に対抗する、日本の「華やかさ」
最近の韓国コスメは、肌馴染みの良いナチュラルなカラーが主流です。しかし、一部のワカモノはそれに物足りなさを感じ始めています。
「特にラメは韓国の商品よりも発色が強く、ギャルメイクのような華やかなメイクをするときにとても良いです」
「ヴィセ(Visee)は高級感のある雰囲気が好きでよく使っています。パールが細かくて色味もきれい」
「盛りたい」ときや、特別な日のための「ビジュアルインパクト」を求める層にとって、日本のアイシャドウやチークのラメ・パールの質感は、非常に魅力的な選択肢になっています。
また、メンズビューティーについても、これまでの「高い・重厚」というイメージを覆す必要があります。
「SHISEIDO MENは価格も高く、40〜50代向けのイメージが強いです。20代が使うには少しハードルが高い」
現在、韓国の20代男性にはVT Cosmeticsなどの親しみやすいブランドが人気ですが、日本のメンズブランドが「20代が等身大で使える高級感」を打ち出すことができれば、新しい市場を切り拓けるはずです。
企業担当者向け:明日からの打ち手
カラーコスメを投入する場合、韓国のトレンド(ナチュラル)に寄せすぎず、あえて日本らしい「ラメ感」「パール感」を前面に押し出して差別化する。
メンズブランドは「憧れの高級品」のポジションを維持しつつ、トライアルしやすい価格帯や「彼女からのプレゼント」という文脈で接触機会を増やす。

座談会から導き出す、日本企業のための「韓国進出・勝負の鉄則」
今回の座談会を通じて分かったのは、韓国のZ世代は「日本ブランドだから」という理由で拒絶することも、逆に盲信することもない、という事実です。彼らは非常に合理的で、自分の五感(特に香りと視覚)に忠実です。
日本企業の担当者の皆さんが、明日から取り組むべきチェックリストをまとめました。
【韓国攻略のための実践チェックリスト】
- その「1位」は価格とセットですか?
ランキング実績を掲げるだけでなく、オリーブヤングの棚で「1+1」や「大幅割引」を連動させる準備ができているか。
- 「X(Twitter)で語れる理由」がありますか?
広告ではない、一般ユーザーが思わず「これ、香りが神すぎる」とつぶやきたくなるような、唯一無二のフック(香り、ラメ、大容量)があるか。
- パッケージは「高級」すぎていませんか?
特にメンズ市場において、20代が手に取る際に心理的・経済的ハードルを感じさせない、等身大なブランディングになっているか。
- 韓国の「無香・微香」トレンドの裏側を見ていますか?
韓国ブランドがカバーしきれていない「日本のフローラル」や「金木犀」のような独自のフレグランス戦略を立てているのか。
韓国のワカモノは、良いものであれば国籍を問わず受け入れます。ただし、その「良い」の基準が急速に変化していることを忘れないでください。私たち現地の大学生のリアルな声が、皆さんのマーケティング戦略の次の一手になることを願っています。