韓国ドラマを見ていると、何かとよく出てきて、どこか印象に残る「食事」のシーン。日本と距離的に近く、文化も比較的似ているところの多い韓国ですが、食事に関する考えや料理の特徴など、日本と異なる部分が沢山あることをご存じでしょうか。今回は、【韓国の食シリーズ】と題して、2週にわたってコラムをお届けします!「食」や「食に関わるあれこれ」から日本との違いや、韓国独自の文化を見ていこうと思います。
無料で「おまけ」をくれる韓国
韓国で食堂に行くと、何も言わずともたくさんのおかずが無料で出てくることがあります。初めて体験する日本人からするとびっくりするかもしれませんが、韓国では日常茶飯事の様子です。
これは韓国人の「おまけでサービスしてほしい」という国民的ニーズの高さを反映した文化だとも言えるし、「気前よくおもてなしをすること」を尊重する文化の表れだとも言えるでしょう。
実際、沖縄の観光地で働く著者は、韓国からの観光客の方を接客することも多いですが、大体決まって「おまけで安くしてくれませんか?」と言われます。様々な国からくる方を接客していてもなかなか無いことなので、「おまけでサービスしてほしい」という国民的ニーズからきているものなのかなと感じました。
また韓国では、コンビニやドラッグストア、スーパーなどで「商品をを2個買ったら1個ついてくる」といったプラスワンのセールス方式のお店もすごく多いです。このような「お通し&おまけ文化」の背景には、韓国人は「追加サービスを大らかに提供する」国民性が現れているのかもしれません。
食事もスピード重視
韓国では「パリパリ文化」(빨리 빨리 パリパリ/早く早く)という言葉が有名であるほど、スピード重視でせっかちな人が多いというのは有名な話ですが、これは食事に関しても同様と言えるでしょう。
例えば、サムギョプサルやカルビを食べる時、日本では大体の焼き肉店ではお肉が運ばれてきて、自分たちのペースでお肉を焼いていくことが多いと思います。しかし韓国の場合、もちろん例外はありますが、多くのお店で店員さんがハサミで肉を切り、テキパキと焼いてくれるので、何かと食事のスピードが速いことが特徴です。
著者が一年間韓国に留学していた中で一番最初に驚いたのは、おまけのおかずとメイン料理がテーブルを埋めつくすスピードが早いことです。もちろんお店によって差はありますが、割合の多さを考えると、韓国人の国民性が現れている部分だと感じました。
多くの食材を融合させる「ビビンバ」精神
韓国では「多くの食材を融合させて、新しい味をつくり出す」という食文化傾向が強いと言われています。なんでも混ぜておいしくしてしまうのです。「混ぜる」といえば、特に人気の韓国料理はビビンバです。
ご飯とおかずさえあれば、ビビンバは誰でも簡単に作れるそうです。韓国人は冷蔵庫におかずが普通一つや二つはあると言われています。そしてコチュジャンや醤油は家にあることが多いので、ご飯に材料を入れて混ぜるだけでいいのです。料理する時に使う大きな器にご飯とおかずを入れて混ぜた後、その器を持ってそのまま食べる姿がドラマによく出てきますが、これは主人公が皿洗いをするのが面倒なほど忙しかったり疲れたりするということを意味しているとも言われています。
ビビンバは食べる人が直接混ぜて食べる料理で、食堂でも同じです。味も味ですが、混ぜる楽しさがビビンバをよりおいしくするのかもしれません。また、ビビンバのように辛い食べ物を、ストレス解消の為に食べている人もいるのではないでしょうか。そう考えると、ドラマの主人公が怒った時によく食べるのも納得ができます。
韓国人はなぜ「一緒に食事しよう」というのか?
韓国人の挨拶は、ご飯で始まり、ご飯で終わる、ということを聞いたことがあるでしょうか?友達にあった時、日本だと「元気だった?」と聞くところを、韓国人は「ご飯食べた?」と聞き、別れる時は「いつかご飯食べよう」ということが多々あります。更に、1人暮らしの友達を心配しながら「ご飯はちゃんと食べている?」と尋ね、別れる時は「ちゃんとご飯食べてね」という。なぜこんなにご飯に関することを聞くのでしょうか?
韓国人は、日本と同じように米を炊いて作ったご飯を主に食べてきました。昔はほとんどの人が農業をしても米がいつも不足していて、人々はご飯を沢山たべるためにたくさん働いたといいます。韓国人にとって「ご飯」は歴史を見ても大切なもののようです。
韓国語で家族を意味する‘식구「食口」はご飯を一緒に食べる人を意味します。毎日一緒に食事をする家族ほど身近な人はいない、ということから、家族でなくてもご飯を一緒に食べれば「他人(남)」は「私たち(우리)」となり、韓国人がご飯を食べたのかと聞くのは、その人を家族のように思っているという意味だそうです。
健康に良い食事が好きな韓国人
昔から食べる物が健康に重要だということは、よく知られている事実ですが、韓国では昔、西洋や中国から、「食べ物と薬は同じようなものだ」という考えが伝わり、今でも強く残っているそうです。実際、韓国料理の材料に薬が使われることがあります。例えば、日本人観光客にも人気のサムゲタンは、鶏肉に、高麗人参といった薬として使われるような材料を入れてじっくり煮込んだ料理で、身体に良いと有名です。
では、なぜ韓国人はこんなに身体に身体に良い食べ物が好きなのでしょうか?
韓国文化を紹介している書籍によれば、理由の一つとして、韓国人が昔から親の面倒をよく見ることを最重要視していたことが挙げられるといいます。韓国人は、食べ物を消化しにくくなった両親に、健康に良い柔らかい料理を作ってあげてきました。その時作る料理の代表例が「おかゆ(죽)」です。現在でもアワビ粥やエビ粥、鶏粥など様々な種類があります。韓国では食べ物がすなわち薬であり、薬がすなわち食べ物だと考えており、誰かが病気になったらどんな食べ物が良いか先に考えるようです。韓国人がなぜ健康に良い食事が好きなのかを探ると、家族や親を大切にする韓国人の国民性が見えてきました。
まとめ
いかがでしたか。ひとことに「食事」といっても、その背景や歴史を遡ってみると、韓国人の国民性や価値観が見えてきたのではないでしょうか。もちろん世代間によっても価値観の在り方には差があると思いますが、韓国人を理解する際の一助となれば幸いです。
参考文献
「食の違い」でわかる「日本と韓国」決定的な差3つ 40年徹底比較して見えた!「共通点と違い」は? | 外食 | 東洋経済オンライン