韓国には、国家的な慶事を祝う「国慶日」や「記念日」のほか、民族的に受け継がれてきた「名節」や宗教に関連する「宗教記念日」など、様々な祝祭日があります。しかしこれらは、全てが休日とは限りません。今回は、カレンダー上に赤く記されることからパルガンナル(赤い日)とも呼ばれ、法定の休日となっている「公休日」についてご紹介します。
普段日本で働いている韓国の方でも、きっと身に沁みついている韓国のお休み感覚があるでしょう。また、お盆のように家族の方に会いに行くこともあるはずです。今回は、そんな方を理解するのにも役立つ情報をお伝えしたいと思います!
韓国の公休日一覧
韓国には年間11日の公休日があります。日本では計16日が「国民の祝日」とされているので、比較的少なめです。近年韓国では休日の多さが経済成長に悪影響を及ぼすという懸念から、減少傾向にあるようです。
日本と共通するものとしては、お正月(新正)やこどもの日などの祝祭日があったり、またお盆と似ている秋夕などがあります。一方で、国の慶事に関係するような韓国だけの祝祭日も多数見受けられます。また、一部の祝祭日は陰暦を使うため、年によって日付が前後することも特徴です。韓国の11日の祝祭日について、次の表にまとめてみました。
これに加えて、5月1日の「メーデー」(労働者の日)は祝日ではありませんが、民間企業はお休みになります。「勤労基準法」(日本でいう労働基準法)に基づいてすべての労働者に適用される有給休日ですが、この日に出勤する人は約4割弱にものぼり、近年では社会問題化しているようです。ちなみに2024年度は、4月10日(水)の国会議員選挙の日も公休日となりました。このように選挙日が特別にお休みになるのは韓国らしいと言えるのかもしれません。
絶対に帰省したい!家族で祝う2大名節
韓国には豊作を祈願する行事「名節」があり、 中でも現在まで受け継がれている代表的なものが旧正月(ソルラル)と秋夕(チュソク)です。当日と前後1日間ずつが祝日となるため、最低でも3連休という大型連休となります。またこれらは陰暦で定められているため、年ごとに日付が異なるのも特徴です。
名節には先祖供養の意味もあるため、この日には実家に親戚が集まって伝統的な食事をつくったり、「祭祀(チェサ)」という法事を簡易化した「茶礼(チャレ)」という儀式を行い、先祖のお墓参りにも行きます。そのため名節が近づくと都市で働く人たちが一斉に故郷に帰り、帰省ラッシュになるそうです。
※茶礼(チャレ):先祖の霊を迎え入れるための祭礼です。各家庭で祭壇に茶礼床(チャレサン)と呼ばれる20種類を超える食べ物を供え、クンジョルという最も丁寧なお辞儀をするなど一連の儀式を行います。その様式は各家庭や地方、また時代によって少しずつ異なっています。
旧正月(ソルラル)
陰暦の1月1日。(新暦で1月終わり~2月中旬頃)韓国で旧正月は、新暦のお正月以上に大きな行事です。 そのため年末年始は西暦の1月1日のみが休みで、代わりに旧正月は 3 連休になります。
茶礼はもちろんですが、ソルラルには目上の人に「歳拝(セベ)」と呼ばれる挨拶を行います。歳拝ではお辞儀をして「徳談(トッタム、祈りやお祝いの言葉)」を交わし、大人は子どもたちにセベットンと呼ばれるお年玉を渡します。ソルラルを迎えると、気分新たに出発するという意味をこめて、ソルビムという新しい服に身を包みます。
料理
日本でも知名度が高いチャプチェやジョン、ナムル、シッケなどは、外せない料理として食卓に並ぶようです。他にも、餅と野菜などでつくられたスープのトッククは、食べることでひとつ歳をとるという意味があるようです。
遊び
数ある民俗ノリ(民俗遊び)の中でも特に普遍的なのが、「ヨンナルリギ(凧揚げ)」や「ペンイチギ(こま回し)」、ユッという木の棒を使った「ユンノリ」、二人でジャンプしてシーソーのように遊ぶノルティギなどです。名節が近づくと多くのK-POP歌手の動画チャンネルに、これらで遊ぶコンテンツがアップされるように、これらの遊びは現在でもよく親しまれているようです。
秋夕(チュソク)
旧暦8月15日。旧正月にも並ぶ最大の名節です。毎年秋夕当日とその前後1日ずつが祝日となり、親戚一同が故郷に集まって先祖の墓参りをしたり、秋の収穫に感謝したりします。
日本でいうと「中秋の名月」にあたる日で、ご先祖を祀ることと豊作を祝うこと、中秋の名月を眺めることまで含まれているそうです。チェサでは家の中の祭祀膳や先祖のお墓に果物やソンピョン(松餅)を供えます。
料理
最も代表的なのはソンピョン(松餅)で、新米で作ったお餅を松葉を敷いた蒸し器で蒸したものです。他にも中にごまやナッツなどの餡を詰めたお餅のパラムトックや、初物の里芋を使った、収穫を祝うためのスープであるトランタンもよく食べられます。
遊び
旧正月の遊びとしても紹介したペンイチギやユンノリはもちろん、丸く輪を作り歌に合わせて回りながら踊るカンガンスルレは、秋夕の時に最も大規模に行われます。
帰省時の定番贈り物
帰省といえば、韓国では親や目上の人を非常に敬うために、帰省する際には家族へ手土産を用意していく人が多いようです。また日本のお中元のような贈り物習慣もあり、旧正月と秋夕の前には親以外にもお世話になった方に贈り物をします。「お餅代」と呼ばれる現金を、子どもを持つ親が普段お世話になっている先生に渡したり、職場から「お餅セット」や生活用品、現金の「お餅代」が支給されることもあるようです。では、韓国ではどんな手土産や贈り物が人気なのでしょうか。
韓国国内でのお土産編
・お肉系:ハムなどはもちろん、日本ではあまりみかけない生肉も贈ります。
・魚慶:イワモチは秋夕の大定番。タチウオならもっと高級!
・健康食品系:高麗人参や蜂蜜など。蜂蜜と言っても、なかには白磁の壺に入った超高級なものも。
・フルーツ系:茶礼で並べられる梨やリンゴをボックスで贈り物することが多いです。リッチに見えるモモやブドウも人気。
日本からのお土産編
・お菓子類:こんにゃくゼリー、じゃがりこ、キットカットなど。
・健康グッズ:太田胃散、目薬、ホットアイマスクなど。
・お酒類:輸入市場でも金額・量ともに3倍以上増加と、日本のお酒は今大人気。特にビール、日本酒、ハイボールがメジャーになってきているようです。
・キャラクターグッズ:ポケモンやクレヨンしんちゃん、サンリオなどは韓国で知らない人はいないほど。
まとめ
いかがでしたでしょうか。韓国の社会文化に結びついた様々な祝祭日や、中で1年に2回家族や親族と集まって過ごす「名節」について紹介しました。ここでは紹介しきれませんでしたが、祝祭日以外にも「父母の日」や「成年の日」のように、記念日としてイベント的に祝われているものもあります。意外と知らない韓国国民のお休み事情について、当記事が理解を深めるきっかけになれば幸いです。
参考文献
韓国の旧正月(ソルラル) | 名節(旧正月・秋夕) | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」
韓国のお正月(旧正月)遊び | 名節(旧正月・秋夕) | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」
趣味教室の講師に「旧正月のモチ代」は必要なのか…韓国「横取りされる?」「出さないといじめられる?」わだかまり(KOREA WAVE) – Yahoo!ニュース