韓国における就職難は国内で大きな社会問題となっている中、韓国政府も様々な政策を打ち出しています。今回は、その中でも韓国政府が推進する「海外就職支援策」について詳しく見ていこうと思います。
海外就職を考える学生が多い背景と、国の政策
韓国における「拡張失業率」ー就職を諦めた人やアルバイトをしながら就職活動をする人を含む20代は約23%に達すると言われています。多くの若者が過度の競争社会の中で、類を見ない就職難に見舞われているのです。そのような背景から、海外での就職を視野に入れている韓国人学生が多くいます。そこで、韓国の厚生労働省などが2013年から推進しているのが「K-Move」です。この事業は、海外企業を招いた就職面接会の開催、就職情報サイトの運営、国別の海外就労の手引書の発行、就労ビザを取得して海外企業に正式に就労した若者への定着金の支給といったものが含まれます。次項からはこの「K-Move」がどのような政策なのか、さらに詳しく見てみていきます。
事業の柱!「K-Move」スクールとは?
「K-Move」の事業の柱とも言えるプログラムが「K-Moveスクール(海外就業プログラム)」です。求人企業が求める語学及び職務能力、生活文化などに対する研修過程を提供後、海外就職への連携を行います。基本プログラムはIT、外食調理、貿易物流、生産管理、営業などの業種毎の職業訓練と、現地言語教育のセットで行われます。支援対象となるのは満34歳以下の未就業者で、海外就職の欠格事由がない者となっています。このプログラムでは四年制大学や専門大学を対象に「海外就業プログラム」を毎年公募しており、大学側は現地のニーズに合わせた海外就業プログラムを立案し応募します。
啓明文化大学校の例を見てみましょう。この大学ではマレーシアをターゲットにしており、IT教育と語学研修を通じて現地のグローバルIT企業や旅行会社などへの就職を斡旋しています。また最近では韓国のペクソク大学校で、K-Moveスクールを目的として日本のIT企業と海外就職人材育成のための産学協力協約を締結を締結しています。
イベントやサイト運営も!国の手厚いサポート
「K-Move」では、スクール運営以外にも就職面接会の開催や就職情報サイトの運営も行っています。就職面接会は今年の8月に韓国で行われ、国内求職者の海外就職支援や、外国人投資企業採用博覧会、外国人留学生採用博覧会が同時に行われました。主要プログラムとしては、企業採用館との1:1の面接/相談や、企業説明会、1:1就職コンサルティングなどです。出展企業数は海外求人先が120社、国内求人・外国人投資企業180社が参加し、求職者は2000人以上参加したものと思われます。この他、日本でも年数回、日本企業と日本に就職を希望する青年韓国人のマッチングイベントが行われています。
また就職情報サイトでは、先ほど紹介したイベントの告知や世界各地の求人情報の公開を行っています。対象国は米国、日本、オーストラリア、東南アジア、中東などが主になっており、現時点では約1400件の求人情報が公開されています。中でも日本の求人数は283件と、アメリカの609件に次いで2番目に多くなっています。これは、韓国政府が世界70各国の送り先の中でも日本は重要な国と考えていることも関係していると思われます。この他、海外就職に成功すると、海外での初期定着や長期勤続を誘因するために一定の条件下で支援金を支給するなど、金銭面でのサポートも行われています。このようなことから、韓国が国を挙げて若者の海外就職をサポートしていることが分かります。
まとめーKORECの活動紹介
いかがでしたでしょうか。韓国国内の就職難の状況や、手厚い韓国政府の海外就職支援も相まって、日本就職を考える学生が増えていく可能性が高いと思われます。
KOREC(https://app.korec.jp/)では今後、韓国政府とも協力しながらこれからも韓国人学生と日本企業を繋ぐお手伝いをしてまいります。KORECが主催する就職説明会「Meet Up!」(https://cafe.naver.com/koreccafe/6082)では各社の企業説明後に座談会を設けて、より韓国人学生と採用担当者様との共通理解を深める企画や、イベント後には軽食を囲んだ親睦会も開催しています。またKORECwebサイトでは日本企業の求人情報だけではなく、日本就職を目指す韓国人学生に寄り添ったサービスとしてKORECcafeの提供、トピックスやノウハウをまとめたメディアの運営、メンター制度の提供など日本と韓国の架け橋となるべく活動していきます。
:参考文献
https://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20230625500074&wlog_tag3=naver
https://asiatojapan.com/jgs/recruitment-employment-countries/korea/jobhunting-situation/
【書籍】
春木育美、2020「韓国社会の現在」中央公論新社.