数え年から満年齢へ!?韓国と日本の年齢文化の比較

近ごろ、韓国で導入された「満年齢統一制度」が大きな話題になりました。制度の導入により、韓国の年齢文化が大きく変容しています。本記事では、この変化が韓国社会にどのような影響をもたらしているのかを詳しく探ります。さらに、韓国と日本との間に存在する年齢に関する意識の違いについてもご紹介します。

韓国の年齢制度について

韓国ではこれまで年齢に2つの数え方が存在しました。それぞれ詳しく紹介していきます。

  • 数え年

韓国では、民法上は満年齢が原則ですが、日常生活では数え年が広く使用されてきました。数え年では、まず産まれた瞬間から1歳と数えます。この考えは赤ちゃんが母の胎内にいる状態から命が始まるという古代の韓国の信念に由来しています。そして、新年を迎える1月1日には、誕生日に関係なく一斉に年齢を重ねるという方式です。言い換えれば、12月31日に生まれた赤ちゃんは生まれた瞬間から1歳であり、次の1月1日には2歳になるのです。

  • 満年齢

満年齢は日本の年齢計算方式と同様で、生まれた日を0歳として、次の誕生日を迎えると1歳になる方式です。この方式は国際的に広く使われています。韓国では公的機関(病院や市役所など)では数え年ではなく満年齢が使用されていました。

満年齢の適用と混乱

2023年6月28日、韓国で「満年齢統一法」が施行され、年齢の計算方法を全面満年齢に統一しました。なぜ韓国ではこの変更が行われたのでしょうか。その背後には、「満年齢統一法」が、年齢基準の混在に起因する不要な社会的コストを劇的に軽減する見通しがあったためです。年金受給などに関連して数え年と満年齢が混在していることから、苦情や論争が生じていたことが一因とされ、混乱を軽減するために満年齢の統一が決定されました。また韓国以外の多くの国が満年齢を採用していることから、国際的な標準に合わせる必要性も考慮されました。

しかし、新制度の導入後、一部分野では満年齢の適用を省略し、酒類・タバコ購入、兵役義務、公務員試験の受験などで数え年を使用するケースが残ってしまい、国民の中に混乱が広がりました。特に酒・タバコに関しては、青少年保護法が優先された結果、混乱が生じたようです。

日本と韓国の年齢に対する考え方の違い

国によって年齢に対する考えの違いや意識の違いがあります。韓国は日本と比べてどのような特徴を持っているのでしょうか?

  • 一歳の格差 

韓国では儒教文化が依然として影響力を持ち、年齢に対する格差が大きいです。1歳でも年齢が異なると、呼称や敬語の使用に差が現れ、年上と年下を厳密に区別します。例えば筆者の経験をもとにすると、韓国の大学生活では1歳年下の後輩からは「オンニ(お姉さん)」と呼ばれ、逆に1歳年上の先輩を「オンニ(お姉さん)」と呼びます。学生生活では「先輩」に近い感覚ではありますが、捉え方が日本よりもきっちりとしている体感です。これは男女間でも若干の違いがあるようで、男性は軍隊の経験が影響して上下関係をより強調します。

  • 就職

最近韓国では、軍隊、留学、ボランティア等の理由で大学へ通いながら1回以上は休学をするのが一般的です。その結果、通常の就業年齢は20代後半になります。男性は兵役が2年間義務付けられており、社会復帰後に早くても24歳からの就職が一般的です。しかし韓国の就職競争は激しく、資格取得や海外留学、ボランティア活動などの経歴を持つことが重要視されるため通常は20代後半に就職する傾向です。女性も同様で、大学卒業後すぐに社会に出るケースは一部に限られ、資格取得や長期の留学などを経て20代後半に就職することが多いです。

また韓国では、少なくともこの時期までには必ず就職が完了していなければならないと考える年齢を「就職マジノ線」と呼んでいます。「就職マジノ線」は「就職」と「マジノ線」の2単語を合わせた造語であり、「マジノ線」というのはもともと「フランスとドイツの国境を南北に縦断するフランスが建造した対ドイツ防衛用のとりで」を表しますが、韓国では何らかの「最終防衛線」として、このマジノ線を比喩として使うことがあります。つまり、就職の最終防衛線=就職する最低年齢を示しているのです。ジョブコリアとアルバモンが共に新入職就職準備生1621人を対象に調査した結果によると、就活準備生が考える新入社員就職マジノ線は男性基準31.8歳、女性29.9歳という結果に。

新入社就職マジノ線年齢は? |防衛日報 (dema.mil.kr)より

※グラフ上の年齢は数え年制度(2020年基準)を使用しているため、満年齢として換算しなおした年齢は男性29.8歳、女性27.9歳になります。)

記事からも明らかなように、大学卒業後にすぐに新卒として就職する日本とは新入社員の年齢においてかなりの差異が存在します。韓国の採用制度はむしろ欧米諸国に近く、即戦力を求めて常時採用を行う傾向が強いです。日本とは制度面で異なる点がありますが、この違いが就職の年齢に対する考え方にも大きな影響を与えていることが明確に示されています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。韓国の年齢制度変更に関するこの記事では、韓国の年齢計算方法とその変遷、新たな満年齢制度の導入、日本との比較、そして年齢に対する意識の違いについて詳しく説明しました。韓国の年齢文化や就職の特徴を理解することで、韓国人人材との円滑なコミュニケーションや採用戦略の検討にお役立ていただけるでしょう。

参考文献

満年齢と数え年~韓国の「数え年廃止」から~ – 毎日ことばplus (mainichi-kotoba.jp)

韓国式年齢の数え方を廃止 l KBS WORLD Japanese

28日から「満年齢」適用…現場は混乱 –  忠北日報 (inews365.com)

外国メディアが見た韓国の「満年齢統一」…「30代が20代に」「一日で若返り」 : 日本•国際 : hankyoreh japan (hani.co.kr)

「満年齢統一法」28日に施行 現場の混乱減らし効率性向上へ=韓国 | 聯合ニュース (yna.co.kr)

大卒新入社員の年齢 20年で6歳上昇=韓国 | 聯合ニュース (yna.co.kr)