韓国財閥シリーズ②現代自動車

韓国経済を語る上で欠かせない、韓国財閥をご紹介するシリーズ。第2回は韓国最大手の自動車メーカー、現代(ヒョンデ)自動車です。日本では「ヒュンダイ」の名前でお馴染みでしたが、2020年に世界統一で「ヒョンデ」へ呼称変更しました。

では、早速グループの成り立ちから見ていきましょう。

成り立ち

ルーツは1934年に誕生した現代財閥(現代グループ)。現代財閥はさまざまな業種の企業を抱える韓国最大のグループでしたが、後継者争いなどから4つに分裂。独立した2000年以降は、傘下に起亜自動車などを持つ新たな財閥グループ「現代自動車」として形成され、韓国で2番目の資産総額を誇っています。

鄭周永によって1967年に創立された当初は、米フォードの技術供与を受け自動車生産を行っていましたが、小型車参入にあたって三菱自動車との提携を開始。1975年には韓国初の純国産車となる「ポニー」を発売しました。

初期は品質面での評価が芳しくありませんでしたが、近年では高品質で安価な価格設定、アウディやB M W出身のデザイナーによるデザイン性の向上により、グループでの販売台数はG Mグループを抜いて世界第5位へ。194もの国と地域で販売される、世界的大企業となっています。

強み

アメリカでの「現代」「起亜」人気は高く、2020年の年間自動車販売台数はホンダに次ぐ6位。中国ではシェアこそ低いものの、年間100万台強を売上げ、インドやベトナム、ロシアなど新興市場でも日本の自動車メーカーを次々に追い抜いているという話です。

躍進の一因は、欧米や日系メーカーからのデザイナー、エンジニア、経営陣を迎え入れた大規模な改革で、商品企画力・研究開発力が格段に上がりました。さらに、現地のニーズに寄り添うオーダーメイド型のマーケティング戦略も、シェア拡大に大きく貢献しています。

また、外部企業とあまり提携をせず、エンジンやトランスミッションなど、傘下のサプライチェーンで自社生産していることも有名です。

企業データ

創業者鄭 周永(チョン・ジュヨン)
現在のリーダー鄭 夢九(チョン・モング)
総資産218兆6000億ウォン
経営理念・強い推進力
・創造的叡智
・積極意志
平均勤続年数18.9年(2019)
男女比19:01
平均年齢41.5歳

トピックス

労働組合とストライキ

現代自動車の労働組合は非常に影響力を持っており、1987年の設立時からほぼ毎年のようにストライキが起こっています。近年では、2016年に韓国内の工場で全面ストライキ(生産ラインを止める全面ストライキは12年ぶり)が発生し、経営状況にも大きな打撃を与えました。

今年7月にも、賃金交渉を巡って3年ぶりにストライキに突入する気配を見せていました。なんとか交渉妥結したようですが、成長を阻む一番の敵は、力を持ちすぎた労働組合なのかも知れません。

水素事業にEV電池製造、アップルカー?

先日、水素インフラを構築するH2モビリティ(ドイツ)への投資を発表した現代自動車。水素燃料電池と水素自動車の拡大に期待が高まります。また、同じく韓国財閥のL G化学と組んでインドネシアにEV(電気自動車)用バッテリー工場を建設するとの発表もあり、電気自動車への移行に向けた動きも気になるところ。交渉は決裂してしまったようですが、アップルカー生産の提携話もありましたし、現代自動車は世界の自動車市場をリードしていく存在の一つと言えるでしょう。

日本市場への新たな参入

日本への販売参入は2001年でしたが、10年弱で撤退してしまった「Hyundai」。そんな現代自動車が2020年再び、日本市場に参入することになりました。2020年6月より日本語版Twitterアカウントが開設され、環境に対応した車種に特化して展開される模様です。

かつての巨大財閥は、他の追随を許さない韓国最大の自動車メーカーとして、今も進化し続けています。